最新記事

ウクライナ情勢

ロシアでプーチン支持率71%に上昇 今後は政権維持のため戒厳令の導入も?

2022年3月19日(土)12時00分
名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授) *PRESIDENT Onlineからの転載
ロシアのプーチン大統領

ウクライナへの侵攻を行ってロシア国内ではプーチン大統領への支持率が急増したが。 SPUTNIK PHOTO AGENCY - REUTERS

真実が知られないようメディア統制を強化

ロシアプーチン大統領が命じたウクライナ侵攻は、次第に無差別攻撃の様相を呈し、学校や病院、原発を攻撃するなど泥沼化してきた。

残虐な戦争の実態はロシアでは報道されず、逆に愛国主義が高揚し、2月28日の世論調査では国民の68%が「特別軍事作戦」を支持。反対は22%だった。プーチン大統領の支持率も侵攻1週間で71%に上昇した。

政権側は反政府系メディアや外国報道機関の活動を統制するなど、戦争の真実が国民に知られないよう躍起になっている。

プーチン大統領の暴走を阻止できるのは、政権内部のクーデターと国内の反戦運動だが、政権の亀裂は現実的でない。国内の反戦世論が今後どう広がるかを探った。

学校では「これは平和維持活動」と教育

プーチン政権は前例のない報道管制に着手した。政権の支配下にある上下両院は3月4日、「ロシア軍に関する虚偽情報を広める行為」に最大15年の禁固刑を科す法案を可決。ロシアへの制裁を支持する行為にも最長3年の禁固刑を科すとしている。

政権は反政府系ラジオ局「モスクワのこだま」やテレビ局「ドーシチ」を閉鎖に追い込み、メディア各社の検閲を強化した。シンクタンクのサイトも更新されておらず、学者らにも反戦論調の禁止を命じている。西側主要メディアもモスクワでの報道活動を自粛した。

国営テレビはウクライナ政府の東部での「ジェノサイド」(大量殺戮)を非難するキャンペーンを延々と報道。最近では、ロシア側が市民退避ルートの「人道回廊」を提案しても、ウクライナ側が拒否したと一方的に非難している。

ウクライナ侵攻を支持するシンボルとして、アルファベットの「Z」が社会に拡散している。

独立系メディア「メドゥーサ」によれば、ロシアの学校に、ウクライナ戦争に関するガイダンスが配布された。それによると、生徒が「これはウクライナとの戦争なのか」と質問した場合、「戦争ではなく、ロシア語圏の人々を弾圧する民族主義者を封じ込める特別な平和維持活動」と答えるよう指示されている。

ロシア人セレブ、スポーツ選手らが停戦を呼びかけ

国民を闇に包む「愚民政策」の一方で、SNSやツイッターでは反戦論も発信されている。

英国で活動するロシアのベストセラー作家、ボリス・アクーニン氏は「ロシア人が精神を病んだ独裁者の蛮行を止められなかったことは、ロシア人全員の責任だ」と強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ソマリランドを初の独立国家として正式承

ワールド

ベネズエラ、大統領選の抗議活動後に拘束の99人釈放

ワールド

ゼレンスキー氏、和平案巡り国民投票実施の用意 ロシ

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中