最新記事

台湾情勢

ウクライナ侵攻直前、台湾で議論されていた3つの危機シナリオ

2022年2月28日(月)20時45分
シャノン・ティエジー(ディプロマット誌編集長)
蔡英文総統

蔡が懸念するのは物理的脅威ではなく心理戦(写真は2016年) OFFICE OF THE PRESIDENT, ROC (TAIWAN)

<中国が便乗するのか。当の台湾はどう考えているのか。最も現実的な脅威として備えているのは「認知戦」だ>

ウクライナの国境付近で緊張が高まっていたこの数週間、アジアの専門家は台湾情勢に及ぼし得る影響に考えを巡らせていた。

中には、ロシアの侵攻に対してアメリカが決意にも決定的な行動にも欠けることから、中国が武力を使って台湾を管理下に置こうとの意識を強める、とする声があった。

一方で、台湾情勢との類似性はないとする指摘もあった。アメリカはインド太平洋の安全保障に注力したいため、ウクライナ防衛への積極的な関与には及び腰だからだ。

当事者である台湾政府はどう考えているのか?

平和的民主主義国家としての自負と、アメリカとの緊密な関係を考えれば、台湾がウクライナ情勢をめぐりロシアを非難したことは驚きではない。

台湾外交部はロシアが侵攻した2月24日に「#ウクライナと共にいる」とのハッシュタグを付け、ツイッターでロシアを非難。蔡英文(ツァイ・インウェン)総統も23日に他国の主権を奪おうとする行為に警告を発しており、25日にはアメリカの同盟国と足並みをそろえて対ロ制裁を科すと表明した。

ただ、台湾の国家安全保障会議(NSC)がウクライナ侵攻の前日に議論していたのは、自国に直接起こり得る3つの危機シナリオだ。

1つ目は、台湾海峡における軍事的行為を通じた物理的危機。

2つ目は、誤情報の拡散や「認知戦」による心理的危機。

3つ目はサプライチェーンや株式市場、1次産品価格の崩壊による経済危機だ。

最悪のシナリオはもちろん、ロシアによるウクライナ侵攻の混乱に乗じて中国が武力行使に出ることだ。

今のところ中国東岸で大規模な軍事行動が始まる兆候は見られない。だが蔡政権は声明で、国民(と国際社会に)に向けて台湾海峡の情勢をつぶさに監視していると、抜かりない姿勢を示してみせた。

「台湾海峡とインド太平洋の安全は台湾当局と軍にとって最重要事項だ」。ただ、そうは述べつつも軍事的行為に対する緊急の懸念は示さなかった。

実際、台湾で起こり得るより現実的な脅威は、中国がウクライナ情勢を利用してフェイクニュースをまき散らし、台湾の未来についての悲観論を扇動することだ。

中国はこれまでも台湾を標的にしたフェイクニュース・キャンペーンを展開してきた。選挙前の世論操作だけでなく、普段から政治的分断や政権への不満を生み出す工作を行ってきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、和平計画の「修正版」を近く米国に提示へ

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中