最新記事

ミャンマー

ミャンマー活動家の親に国軍が圧力「家を失いたくなければ親子の縁を切れ」

Myanmar Military to Parents: Disown Dissenting Children or Lose Your Home

2022年2月15日(火)21時33分
ジャレン・スモール

2021年11月に「絶縁」されたジャーナリストのソー・ピヤイ・アウン(現在はタイに在住)も、同様の心境を告白した。

「私との縁を切るという広告を見た時は、少し悲しかった」と、ソー・ピヤイ・アウンはロイターに語った。「だが、両親が圧力を恐れたのはわかっている。家を没収されたり、逮捕されたりするのではという不安があったのだろう」

人権団体「ビルマ・キャンペーンUK」の上級理事を務めるワイ・フニン・プウィント・ソンは、こうした公式の絶縁宣言はすべて、国民の間に分断を引き起こし、抗議参加者たちに圧力をかけるための軍事政権の計画の一部だと指摘する。

「(抗議参加者の)家族は、罪を着せられることを恐れている」と、ワイ・フニン・プウィント・ソンはロイターに語った。「自分たちが逮捕されたり、トラブルに巻き込まれたりすることを避けたいのだ」

国軍の常套手段

反政府活動家の家族を標的とするのは、2007年、さらには1980年代末の騒乱の際にも、ミャンマー軍によって用いられた戦略だ。2021年のクーデターが始まって以来、この戦略が復活し、以前よりはるかに頻繁に用いられている。ミャンマーの経済の中心で旧首都ヤンゴンを拠点とし、豊富な経験を持つ上級弁護士のキン・マウン・ミンは、ラジオ・フリー・アジアにそう語った。

「1988年にもこのような事例が数多くあった。たとえその人物が収監されたとしても、家族はその人物と絶縁しない限り、仕事が続けられない状況だった」と、キン・マウン・ミンは指摘する。「自分たちに危害が及ぶことを防ぐためにそうせざるを得なかったとしても、こうしたやり方が家族にとってどれほどつらいかは想像に難くない」

広告を出して我が子との絶縁を宣言した2人の人物はロイターに対し、公に声明を出したのは、政権に対して自分たちが「トラブルメーカー」ではないことを示し、子どもたちの行動について責任を問われることを防ぐためだったと語った。

「私の娘は、自分が正しいと信じる行動をしている。だが、私たちがトラブルに巻き込まれたら、娘もきっと心配するはずだ」と、母親の1人はロイターに語った。「私が娘に対してとった行動を、娘は理解してくれると信じている」

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却承認 ハイマースなど過去最大の

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中