最新記事

経済制裁

ロシア市民、銀行ATMに長蛇の列 欧米制裁で現金不足に懸念

2022年2月28日(月)10時48分
ウクライナとロシアの国旗と経済制裁のイメージ

ロシアではウクライナ侵攻を巡る欧米の相次ぐ制裁で現金不足に陥り、引き出しや決済ができなくなると懸念した市民がATMの前で長蛇の列を作った。写真はウクライナとロシアの国旗と制裁のイメージ。25日撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

ロシアでは27日、ウクライナ侵攻を巡る欧米の相次ぐ制裁で現金不足に陥り、引き出しや決済ができなくなると懸念した市民がATMの前で長蛇の列を作った。ロシア当局や各行は不安解消に努めている。

米国、英国、欧州、カナダは26日、ロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することで合意。ロシア中央銀行の外貨準備の使用も封じる見通しで、同国経済への打撃は大きいとみられる。

サンクトペテルブルクに住むピョートルさんは「24日以降、みんなATMを走り回って現金を引き出そうとしている。ラッキーな人は引き出せているし、思うほど引き出せていない人もいる」と話した。

SWIFTから締め出されたロシアの銀行は海外の銀行とやり取りできなくなるが、アナリストはロシア中銀の6300億ドルを超える外貨準備の使用制限の方が影響が大きいと指摘する。

米国在住の元ロシア中銀副総裁、セルゲイ・アレクサシェンコ氏は、ロシアの政府系ファンド(SWF)が事実上消滅することになると指摘。「プーチン大統領とクドリン(元財務相)は大規模戦争を念頭に、何年もかけてSWFを構築した。戦争が発生したが、金はない」と述べた。

一方、外国為替市場ではルーブルに対する他通貨の提示レートが急騰。25日終値が1ドル=83ルーブルだったのに対し、27日に一部銀行は100ルーブルを上回るレートを提示した。

ロシアの最大手銀行ズベルバンクは自行や提携先の決済システムで顧客の取引に問題は見られていないと説明。国営開発対外経済銀行(VEB)は海外から制限が課せられても国内プロジェクトの支援を停止することはないと表明した。

ロシアのカシヤノフ元首相はツイッターに「最も重要なのは、西側が中銀の外貨準備を凍結していることだ」と投稿。「ルーブルを支えるものが何もないが、通貨印刷は続く。ハイパーインフレや経済の大惨事はそれほど遠くない」と警告した。

外貨準備の凍結について中銀にコメントを求めたが、27日に回答はなかった。

ロシアの元投資銀行家、ローマン・ボリソビッチ氏は、28日の市場は「混乱」に見舞われると予想。ロシア当局が「制限を導入するのは確実だ。ルーブル防衛はできないが、かつてそうしたように、おそらく取引を停止し、人為的にレートを決定することになる。闇市場ができるだろう」と述べた。

中銀は、28日はレポ取引を通じて無制限に資金供給すると表明した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ウクライナ危機で分断される欧州 米と連携強める英 宥和政策の独 独自外交唱える仏
・【ウクライナ侵攻軍事シナリオ】ロシア軍の破壊的ミサイルがキエフ上空も圧倒し、西側は手も足も出ない
・バイデン政権、ロシアのウクライナ侵攻準備を懸念「偽旗作戦の工作員が配置された」
・経済を理解しなければ、ウクライナでプーチンが「賭けに出る」理由は分からない


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部オデーサに無人機攻撃、2人死亡・15

ビジネス

見通し実現なら利上げ、不確実性高く2%実現の確度で

ワールド

米下院、カリフォルニア州の環境規制承認取り消し法案

ワールド

韓国大統領代行が辞任、大統領選出馬の見通し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中