最新記事

中国

ハイテク北京冬季五輪と中国の民間企業ハイテク産業競争力

2022年1月25日(火)07時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

北京冬季五輪2022 Fabrizio Bensch-REUTERS

中国は北京冬季五輪を「ハイテク冬季五輪」と位置付けてハイテク産業とクリーンエネルギーをアピールしているが、中国の民間企業のハイテク産業研究開発力と、それを支える「日本の貢献」を考察する。

ハイテク冬季五輪をアピールする中国の狙い

2月4日から開幕する北京冬季五輪を、中国政府は「ハイテク冬季五輪」と位置付けている。政策的には、たとえば中国政府の中央行政庁に一つである「科学技術部」の「科技冬奥 2022 行動計画」新華網の報道などがあるが、具体的な手段に関しては中央テレビ局CCTVの報道が参考になる。

それらによれば中国のハイテク産業の成果は北京冬季五輪のハイライトになっており、時速350キロの自動運転高速鉄道、毛沢東の大好物だった「紅焼肉(ホンサオロウ、豚の角煮)さえ出してくる24時間対応の全自動飲食提供ロボット、試合の実況中継を手話通訳する人工知能(AI)の女性アナウンサーなど、300種類ほどの技術が駆使されている。ハイテクの中にはクリーンエネルギーも含まれており、太陽光パネルなどに注ぐ中国の戦略には尋常でないものがある。

なぜ北京冬季五輪を、エコを含めたハイテク展示場のようにしているかと言うと、その狙いはいくつかある。

まず挙げられるのは、中国の最先端のハイテク製品は、情報収集などのスパイ行為が潜在しているとか強制労働による製品であるなどとして、アメリカから厳しい制裁を受けているが、豚の角煮やAIアナウンサーの手話通訳などには、そういった制裁すべき要素が入っていない。したがって日常生活で中国のハイテク製品がどれだけ役立っているかを国際舞台でアピールすることにある。

対中制裁をしているのは、アメリカを中心としたごく少数の「西側先進国」で、それもアメリカの制裁によって制限を受けるという性格のものが多く、積極的に自ら進んで対中制裁をしようという国は少ない。日本などは、アメリカと同盟あるいは友好関係にありながら、対中制裁をしていない国の典型例だ。

さらに世界200ヵ国ほどの中の圧倒的多数は、G7などの先進国とは切り離された発展途上国や新興国だ。これらの国々は中国経済に依存し、中国の先進的なハイテク産業の恩恵を受けている。それらの国にアピールして、ハイテク製品を製造している民間企業の発展を促進するという狙いもある。

ほとんどの国が選手を送り、その選手に伴う団体や記者団がいるので、こんなに大きな宣伝の場はない。「商売繁盛」にも貢献している。

またクリーンエネルギーなどは、1月3日のコラム<ウイグル自治区トップ交代、習近平の狙いは新疆「デジタル経済と太陽光パネル」基地>に書いたように、中国は新疆ウイグル自治区を中心として太陽光パネルの一大基地を形成しようとしている。そうでなくとも中国の太陽光パネル生産量は世界一だ(2019年データで世界の約79%)。まして今後は新疆ウイグル自治区を中心として大展開していくので、クリーンエネルギーでは世界の最先端を行く可能性を秘めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ポーランド首脳会談、ウクライナ情勢など巡り協議へ

ビジネス

米労働者の家計不安増大、8割近くが経済に懸念=米銀

ワールド

訂正-プーチン氏への「メッセージなし」、決定を待つ

ビジネス

米製造業新規受注、7月は前月比1.3%減 航空機受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中