最新記事

SNS

お粗末な「物量作戦」に頼ってきた中国の「SNS工作活動」に、洗練の兆し

Tweeting Into the Void

2022年1月7日(金)17時31分
ジョシュ・ゴールドスタイン ルネ・ディレスタ(米スタンフォード大学インターネット観測所)
中国スマホ

ILLUSTRATION BY STUDIOSTOKS/SHUTTERSTOCK

<膨大な数の「捨てアカウント」を作って中国共産党寄りの主張をばらまく従来の作戦は、ほとんどフォロワーも影響力も持てなかったが......>

ツイッターは2021年12月2日、2つの中国政府系の宣伝工作アカウント群の排除を発表した。新疆ウイグル自治区に関する中国共産党の主張を繰り返す約2000のアカウントと、同自治区政府に雇われた民間企業「張裕文化」関連の112アカウントだ。

私たちスタンフォード大学インターネット観測所は、ウイグル人の扱いについて党寄りの主張を拡散してきたこの2つのアカウント群について分析した。いずれも国営メディアの報道内容をコピーしたり、良い暮らしだと語るウイグル人の証言なるものばかり伝えてきたアカウント群だ。

これ以前に削除された多くの事例と同様、やり口は稚拙だった。実在の人物のアカウントに見せ掛ける努力もせず、プロフィール画像が初期設定のままだったり、ネット上の画像を借用していたりする。そして他の話題の投稿履歴は皆無に等しい。

フォロワーの数はゼロに近い。投稿への反応(リツイートや「いいね」など)もほとんどない。私たちが初回の分析対象としたツイート3万1269件のうち、97%は反応が皆無だった。

20年に削除されたアカウント群の場合も、ツイート1件ごとの反応数は平均0.81。つまり「いいね」の1つもつかない。アカウントごとの累計反応数も平均23.07にすぎなかった。

実際、欧米のSNSを舞台とする中国共産党系の宣伝工作は、総じて同じ主張を執拗なまでに繰り返すが、そのわりに反応は鈍い。

2000以上のアカウントが削除された今回も、数週間後には似たようなアカウントが何百も登場していた。私たちとは別のアカウント群を調べた研究者たちも、同様の傾向を指摘している。

効果のない活動をなぜ繰り返すのか

まともな拡散効果を得られない工作活動を、性懲りもなく繰り返すのはなぜか。その理由を考えてみよう。

第1は、プラットフォーム側の対応が一定の効果を上げている可能性だ。

アカウントが削除されるたびに、中国の工作隊は振り出しに戻って新たなアカウントを立ち上げている。どうせすぐに削除されるのは承知の上だから、投稿者の人物像を念入りに作り上げたりせず、ひたすら書き込みの数やハッシュタグを増やし、情報の洪水を起こすことに専念する。与えられた状況ではそれが最適な戦略だと判断したのだろう。だが、プラットフォーム側の対応(アカウントの削除)のせいで効果を上げられないのかもしれない。

プラットフォーム側がアカウントの一斉削除を公表するのは、一定の抑止効果を期待するからだ。現にフェイスブックのセキュリティー担当者らは「外国または国内の情報工作というレッテルを貼られ、削除されたら彼らの評判は落ちる」と論じている。

しかし、それでも次から次と新たなアカウントが生まれてくる。これはアカウント削除の抑止効果が働いていない証拠ではないか。そもそも私たちの知る限り、こうした情報工作に携わる人たちが自らの「評判」を気にして行動を変えた事例はない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ベネズエラ産原油の初回売却を実施 売却益5億ド

ビジネス

NY外為市場=円反発、当局のけん制発言で下げ止まり

ビジネス

米経済活動、8地区で拡大 物価上昇は緩やか=地区連

ビジネス

米国株式市場=続落、ナスダック主導 ハイテク株や銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広がる波紋、その「衝撃の価格」とは?
  • 3
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救った...実際の写真を公開、「親の直感を信じて」
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    宇宙に満ちる謎の物質、ダークマター...その正体のカ…
  • 9
    年始早々軍事介入を行ったトランプ...強硬な外交で支…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中