最新記事

通貨危機

リラ暴落で海外からトルコに買い物客が殺到、国民はインフレで安いパンに行列

Foreign Tourists Flood Turkish Towns to Shop As Nation's Currency Declines

2021年12月28日(火)19時55分
ローラ・コーパー

トルコリラは12月、史上最安値を更新した(写真は2018年) Murad Sezer-REUTERS 

<トルコの経済危機の背景には、インフレなのに金利を下げるというエルドアン首相の経済失政がある>

ブルガリアとギリシャから今、大勢の買い物客がトルコに押し寄せている。原因はトルコの通貨リラの急落だ。

トルコは現在、経済危機に直面しており、インフレ率(物価上昇率)は21%を超えている。通貨リラは、12月20日には1ドル=18.36リラまで下落し、2021年の年初来60%以上の下落を記録した。

27日にはひとまず1ドル=11.46リラにまで回復したが、インフレは、食品からガソリンに至るまで、あらゆるものの価格に影響を及ぼしている。

この状況を好機と捉えているのが、近隣諸国の人々だ。年末年始の休暇に向けて、大勢の人がトルコ北西部のエディルネにある市場や食料品店に押し寄せている。

ブルガリア人の女性、ハティジェ・アミドバはAP通信に対して、クリスマス・イブの午前3時に起きて、トルコ行きのバスに乗ったと語った。

エディルネのウルス・バザール共同組合の会長であるブラント・レイソグは、エディルネを訪れる外国人観光客の数は、この数週間で4倍に増えたと語る。

スーツケースいっぱいの買い物

「駐車場はブルガリアの車だらけで、エディルネやイスタンブールのナンバープレートはほとんどない」と彼は述べ、さらにこう続けた。「彼らは狂ったように買い物をする。何を買っているのかも分からないまま、同じものを5個、10個と買っていく。後から売ればいいとか、これを逃したらもう買えないと考えているのだ」

クリスマス・イブには、同市内の市場や小売店はブルガリアからの買い物客で大混雑。外国人買い物客はまず両替所に行って安いリラを大量に手に入れ、その後、市場や食料品店に向かう。

子どもや孫のためのプレゼントを買いに来たというグルフィエ・オシノバ(60)は、ブルガリアで同じものを買えばずっと高くつくと語った。

ブルガリア人の買い物客にとって、トルコの食料品店はかなりのお買い得で、彼らはスーツケースが一杯になるまで買い物をして帰っていく。

隣国ギリシャからも、ユーロをリラに両替して買い物に訪れる人が大勢いる。ギリシャからトルコに買い物に来たエスラ・モラは、家族と自分にプレゼントを買うことができて嬉しいと語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、アイオワ州訪問 建国250周年式典開始

ビジネス

米ステーブルコイン、世界決済システムを不安定化させ

ビジネス

オリックス、米ヒルコトレーディングを子会社化 約1

ビジネス

米テスラ、6月ドイツ販売台数は6カ月連続減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中