最新記事

トルコ

通貨リラ暴落のトルコ インフレ直撃の庶民は安いパン求め市営売店に行列

2021年12月13日(月)10時37分
イスタンブールのパン店

トルコでは通貨リラの暴落とインフレの進行で国民の所得が目減りし、最大都市イスタンブールでは多くの市民が、わずかでも家計を節約しようと、市の提供する安いパンを買うために行列を作っている。写真は7日、イスタンブールのパン店に行列する市民(2021年 ロイター/Umit Bektas)

トルコでは通貨リラの暴落とインフレの進行で国民の所得が目減りし、最大都市イスタンブールでは多くの市民が、わずかでも家計を節約しようと、市の提供する安いパンを買うために行列を作っている。

長らく与党・公正発展党(AKP)の地盤となってきたイスタンブールのスルタンガジ地区では、数十人が市の運営する売店でパンを買おうと待っていた。経済的に苦しくなり、ここで買うほかないという。

家族のためにパンを買ったオズカン・ケスダさん(50)は「1リラ、5リラ、10リラ、20リラといちいち数えるほど追い詰められている」と話した。

苦境の責任は政府にあるとケスダさんは考える。「20年間同じ体制だったのだから、政権が交代しなければだめだ。この地区はほとんどの人が『皇帝万歳』と言うかもしれないが、そういう時代は終わった。私と同じようにAKPに投票した人たちも困っている」という。

ラマザン・カンベイさんは家計が急激に悪化した。これまでは1週間に1000リラでやりくりする生活で、そのうち半分が食費だった。リラ暴落で1000リラはドル換算ではわずか73ドル(約8300円)にしかならず、必需品すら賄えなくなった。

「週に1000リラじゃ足りない。これは誰のせいだ」とカンベイさん。

イスタンブールのエクレム・イマムオール市長は、市の売店にできる行列は経済的な危機のみならず、政治的変化が必要だということを示していると見ている。イマムオール氏はエルドアン大統領の敵対候補と目されている人物だ。

イスタンブール市営の売店で売られているパンは価格が1.25リラ(0.09ドル)と、普通のパン屋の半分程度。需要に応じるため、1日に焼き上げる数を約2倍の150万個程度に増やした。それでも行列はなくならず、この数でも足りないという。

イマムオール氏は市庁舎で行ったインタビューで、「貧困状態は明白だ。好きでパンを買いに並んでいるわけではない」と話した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中