最新記事

ハラスメント

欧米でも増えるモンスター客、コールセンター従業員8割が暴言を経験 勤務前からにじむ涙 

2021年12月17日(金)17時50分
青葉やまと

コールセンター勤務者の81%が顧客から暴言を吐かれた経験をもつ...... Bojan89-iStock

<コロナ禍の不満により、コールセンター担当者への暴言や心的虐待が欧米でも増加。暴言に対し、口座の強制解約で毅然と対応する銀行も>

スーパーの店頭や駅の窓口などで、係員に対して怒鳴りつける残念な顧客の姿を目にすることがある。サービス提供者に対して不当な要求をする、あるいは度を超えてぞんざいな態度をとるなどの行為は、俗にカスハラ(カスタマー・ハラスメント)とも呼ばれる。

近年国内で大きな問題となっており、場合によっては威力業務妨害などの刑事事件として立件されることもあり得るが、抑止力として十分に働いていないのが現状だ。

お客さまは神様」と説いたのは演歌歌手の三波春夫だったが、これは神前のように清い心で舞台に立つべしとの戒めを込めたことばだ。これを誤って援用し、顧客は事業者よりも立場が上であるとする主張も目立つ。

こうした一部消費者による迷惑行為は、日本固有の現象というわけではないようだ。とくにコロナ禍において顧客側のストレスが蓄積し、その矛先が窓口担当者などへ向かうケースが欧米でも増えはじめた。被害が目立つ職種のひとつが、コールセンターに勤める電話オペレーターだ。

止まらない個人攻撃 「遺書に名前書く」の脅しも

イギリスではネット銀行のファースト・ダイレクト社のCEOが自ら、同行コールセンター従業員への嫌がらせが増えているとし、公開レターを通じて顧客に理解を求めた。クリスマスを前に被害が拡大しており、スタッフへのネットストーカー行為や罵倒などが相次いでいるという。

同社のクリス・ピットCEOは英BBCに対し、顧客は「たいていの場合において親切です」と述べる。一方で、窓口担当者への個人攻撃に走るケースが断続的に発生しているという。

ある顧客は電話オペレーターのフェイスブック・アカウントを探し出し、容姿も以前の職場も知っているといって脅しをかけたという。別の顧客はセキュリティ認証に失敗したことに立腹し、150回以上もコールセンターに電話をかけ、対応した一人ひとりを罵倒していった。

デイリー・メール紙は、ロンドンに本店を置くロイズ銀行での例を取り上げている。思い通りの対応が受けられないと知った顧客のなかには、SNSに担当者名を書き込む、あるいは裁判で訴えるなどと脅す者が絶えないという。自殺を仄めかし、遺書に名前を書き遺すと述べた顧客もあった。同行のあるコールセンター担当者は、「心理的虐待」を受けていると嘆く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

UBS、第2四半期利益が倍増 市場混乱でトレーディ

ビジネス

午後3時のドルは148円付近で上昇一服、日米中銀会

ビジネス

村田製、4―6月期連結営業利益は7.2%減 円高や

ビジネス

HSBC、上半期は26%減益 中国の損失拡大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 3
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突っ込むウクライナ無人機の「正確無比」な攻撃シーン
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    タイ・カンボジア国境紛争の根本原因...そもそもの発…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「出生率が高い国」はどこ?
  • 8
    グランドキャニオンを焼いた山火事...待望の大雨のあ…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中