最新記事

人権問題

ミャンマー、米国人記者に禁固11年の実刑 バイデンの対軍政強硬姿勢が影響?

2021年11月13日(土)21時33分
大塚智彦
独立系メディア「フロンティア・ミャンマー」の編集幹部ダニー・フェンサー

ミャンマーの裁判所で禁固11年の判決を受けた独立系メディア「フロンティア・ミャンマー」の編集幹部ダニー・フェンサー REUTERS 

<母国の対ミャンマー政策がジャーナリストの運命を左右することに──>

ミャンマーの裁判所は10月12日、軍政に逮捕されて複数の容疑で公判中だった米国人記者ダニー・フェンサー氏に対して禁固11年の実刑判決を下した。ダニー氏が編集幹部を務める「フロンティア・ミャンマー」がAPやAFPなど外国メディアに対して13日に明らかにした。

「フロンティア・ミャンマー」によると12日は「嘘の情報を流して社会不安を煽った」とする「扇動罪」のほか入国管理法違反、非合法団体活動などの容疑に対する判決で、ダニー氏はこのほかに最高刑が終身刑でもある「テロ関連法違反」容疑でも訴追を受けており、今後さらに禁固刑が加算される可能性もあるという。

この日の判決を受けてミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官はジュネーブで声明を発表し「ミャンマーで拘束中のすべての報道関係者の即時釈放」を要求した。

出国間際に空港で拘束

米ミシガン州デトロイト出身のダニー記者は、ミャンマーで独立系メディア「フロンティア・ミャンマー」の編集幹部を務めながら記者として情報発信を続け、2月1日の軍によるクーデター発生後は軍政に批判的な立場からの報道を続けてきた。

2月1日以降ミャンマー人記者や日本人のフリージャーナリストなどが次々と当局に身柄を拘束されるなか、ダニー記者も5月24日マレーシアのクアラルンプール経由で米国に向かうためヤンゴンの国際空港へ向かった。ところが出国しようとした直前に空港で治安当局によって身柄を拘束された。その後、政治犯収容所として悪名高いヤンゴンのインセイン刑務所に収監されていた。

ダニー記者の拘束について米国務省は何度も「即時釈放」を軍政に要求し続けてきたが、軍政はまったくこれに応じなかった。

軍政のゾー・ミン・トゥン国軍報道官は9月30日に「ジャーナリストとしての仕事だけをしていれば逮捕の理由はなかったが、それ以外の活動をしたからだ」と「ボイス・オブ・アメリカ」にダニー記者逮捕の理由を語った。この「それ以外の活動」が具体的に何を示すのかは一切明らかになっていないが、反軍政の立場からの報道が「嘘の情報を流して社会不安を扇動した」と解釈されているのは間違いないとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人・失業率4.6

ビジネス

ホンダがAstemoを子会社化、1523億円で日立

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

トランプ氏がBBC提訴、議会襲撃前の演説編集巡り巨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中