最新記事

習近平

習近平「歴史決議」の神髄「これまで解決できなかった難題」とは?

2021年11月13日(土)13時48分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

さて、この黄色部分から、なぜ「難題」が「反腐敗運動だ」と分かるかというと、2012年の第18回党大会から2017年の第19回党大会までの間に起きた大きな出来事は「虎も蠅も同時に叩く」という反腐敗運動だからだ。

しかも中国の有史以来、延々と続いてきた賄賂文化に、江沢民による激しい腐敗醸成が招いた中国共産党幹部らの底知れぬ腐敗文化が筆舌に尽くしがたいほどだ。 

胡錦涛政権になって、胡錦涛がどんなに腐敗と闘おうとしても、チャイナ・ナイン(当時の中共中央政治局常務委員会委員9人)の中に6人も江沢民派が送り込まれていたので、チャイナ・ナインにおける多数決議決の時に、その6人に阻まれて、胡錦涛は反腐敗運動を実行することができなかった。

だから図表1と図表2に共通している言葉の内、赤線を引いた言葉「長い間解決したいと思ってきたが解決できなかった難題を解決し、過去に何とかしようとしたが出来なかった大きな事を成し遂げた」が、「反腐敗運動」を指していると推測できるのである。

これは正に中国5000年の歴史以来の難題で、どの指導者も解決したいと思いながら、多くの王朝が腐敗で滅んでいった実例からも十分に推測できる。

新中国(中華人民共和国)が誕生して間もない1951年末、毛沢東も「大虎も小虎も同時に叩く」というスローガンの下に、反腐敗運動を展開した。

そのとき天津の小学校に上がっていた私は、毎日のように「虎を何匹捕まえた」という話を授業中に聞かされたものである。

まだ国民党が統治する「中華民国」の時代だった1946年から48年にかけて、生まれ育った長春市で目の前に国民党兵士がいる環境で日々を過ごしたが、八路軍(当時の共産党軍の一般的呼称)により食糧封鎖されている中でも、国民党軍と一部の金持ち(中国人)の間では腐敗が蔓延して怠惰が広がっていた。

こういう経験からも「難題」が「腐敗」であるということを実感することができる。

腐敗撲滅によりハイテク軍事力が先鋭化

1989年に天安門事件が起きた際、鄧小平は鶴の一声で江沢民を中共中央総書記に指名するのだが、北京に政治基盤のない江沢民は「金」で結ばれた関係によりに自らの権力基盤を強化し、中国の政財界を底なしの腐敗地獄へと陥れていった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国特別検察官、尹前大統領の拘束令状請求

ワールド

ダライ・ラマ、「一介の仏教僧」として使命に注力 9

ワールド

台湾鴻海、第2四半期売上高は過去最高 地政学的・為

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中