最新記事

ブラジル

コロナ軽視のボルソナロ、万事休す?ブラジルの上院委員会が「人道に対する罪」で訴追勧告へ

Brazil Senate Recommends Bolsonaro Be Charged With Crime Against Humanity

2021年10月21日(木)16時45分
ゾーエ・ストロズースキ
ボルソナロ

無謀なコロナ対応で再選が危ぶまれ始めたボルソナロ Adriano Machado-REUTERS

<検察が動くかどうかは怪しいが、ボルソナロが再選を目指す来年の大統領選には不利に働くかもしれない>

コロナ禍に対する政府の対応を調査してきたブラジルの上院委員会は10月20日、「人道に対する罪」でジャイル・ボルソナロ大統領の訴追を勧告する報告書の草案をまとめ、提出に向けて最終的な審議に入った。

ブラジルでは新型コロナウイルス感染症による死者が60万人を突破し、アメリカに次いで世界2位となっている。新型コロナを「ただの風邪」と軽視してきたボルソナロの対応には、国内でも不満が渦巻いている。

レナン・カリェイロス上院議員が提出した報告書の草案は、委員会が半年間進めてきた調査の結果をまとめたもの。人道に対する罪のほか、デマの拡散、煽動など9つの罪で、ボルソナロを訴追するよう求める内容だと、匿名を条件にAP通信の取材に応じた2人の委員が明かした。

ボルソナロはマスクの着用など国際的な公衆衛生ガイドラインを無視し、感染拡大を防ぐ規制措置を怠り、制御不能な感染爆発を招いたと非難されている。ワクチンの調達が遅れたことに加え、国民にエビデンスのない治療薬の使用を勧めたことも問題にされている。

検察が動く保証はなし

ボルソナロは容疑を全て否認し、委員会の調査は自分を陥れるための政治的な動きだと主張している。

以下はAP通信が伝えた詳細。

上院の委員会は10月26日にこの報告書の採決を行うことになっており、それまでの審議で内容が修正される可能性は残されている。また報告書はボルソナロが任命した検事総長に提出されるため、勧告を受けて検察が動くとは限らないと、アナリストらは指摘する。

報告書が挙げる容疑には、公金の不正使用と「業務上の不正」も含まれる。業務上の不正とは、公務にある者が職務の一環として義務付けられた行為を私的利害のために先送りにしたり実行を怠ったりすることだ。

政府のコロナ対応への批判の高まりを受けて、上院は今年4月調査委員会を設置。政府の怠慢が多くの死者を出したとの主張の妥当性を検証してきた。

カリェイロスが報告書の草案をまとめ、20日に11人のメンバーから成る委員会に提出した。提出された草案の元のバージョンは1200ページに上っていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中