最新記事

アフガン情勢

タリバン、今度は女性の権利守るか? アフガニスタンに渦巻く疑心暗鬼

2021年8月22日(日)10時49分

アフガンの民間テレビ局・トロでは17日、女性アンカーが生放送でタリバンの報道担当者にインタビューした。

女性に離職を命令

アフガンの少女教育を推進する活動家、パシュタナ・デュラニさん(23)は、タリバンの約束に警戒の目を向けている。

デュラニさんは、タリバンが少女の通学を認めると請け合っていることに触れ「有言実行でなければならない。現時点では言ったことを実行していない」と、ロイターの取材に答えた。

「彼らが学校のカリキュラムを制限するなら、私はオンライン図書館にアップロードする本を増やす。インターネットを制限するなら、家庭に本を送る。先生を制限するなら、地下学校を始める。つまり私は、彼らの問題を解決する答えを持っている」とも述べた。

タリバンが女性に政治や政策立案の仕事を許すかどうかが、彼らが約束する権利の平等の真価を問う試金石になる、と言う女性もいる。

2012年にパキスタンの武装勢力に銃撃されて重傷を負い、その後、女子が教育を受ける権利を求める活動を行ってノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんは、アフガンの情勢を深く憂慮していると述べた。

マララさんは、BBCの番組で「女性の権利を訴える活動家を含め、アフガニスタンにいる活動家数人と話す機会があった。この人たちも今後、生活がどうなっていくか分からなくて不安だと話している」と語った。

国連児童基金(ユニセフ)は、タリバン当局者らとの協力について、慎重ながらも楽観的な見方を示した。タリバンが今のところ、女子の教育を支援すると表明していることが一因だ。

ユニセフは今もアフガンの大半の地域に支援を行っており、カンダハルやヘラート、ジャララバードなどタリバンが最近制圧した都市で、新たなタリバン代表者らと最初の会談を持った。

ユニセフのアフガニスタン現地活動責任者、ムスタファ・ベン・メサウド氏は、国連の記者説明会で「われわれは協議を続けている。こうした協議に基づき、かなり楽観的な見解を抱いている」と述べた。

しかし、国連のグテレス事務総長は16日、タリバン支配下での「冷酷な」人権侵害と、女性と少女に対する暴行の増加に警鐘を鳴らした。

タリバンの戦闘員は7月初め、カンダハルにある商業銀行の支店に入って従業員の女性9人に対し、不適切な仕事をしているので立ち去れと命じた。ロイターが先週報じた。戦闘員らは、男性の親族が彼女らと交代することは認めた。

(Rupam Jain記者 Lucy Marks記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・タリバン大攻勢を生んだ3つの理由──9.11以来の大転換を迎えるアフガニスタン
・タリバンが米中の力関係を逆転させる
・<カブール陥落>米大使館の屋上からヘリで脱出する「サイゴン陥落」再び


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中