最新記事

アフガニスタン

「金鉱の上に横たわる貧者」―アフガンの地下資源と中国

2021年8月20日(金)22時28分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国企業に関しては「中国石油」や「中冶集団」などの名前が見られるが、これらは中国独自の情報として記入したものと思う。ここでは銅鉱山に関してご紹介する。

アフガン最大級の銅鉱山を早くから中国が押さえていた

実は銅鉱に関しては、2008年に中国冶金科工集団(中冶集団)と江西銅業集団が新たなコンソーシアム(共同事業体)を形成したとき、アフガニスタン政府はこのコンソーシアムがアフガニスタンの経済発展を後押ししてほしいと大きな期待を寄せていた。

そのためアフガン最大の銅山であるメス・アイナク銅鉱山(Mes Aynak)(世界で2番目に大きい未開発の銅鉱床)に関して、アフガニスタン政府は中国に「2008年から、30年間の採掘権」を与えているが、紛争が多く開発はなかなか進まなかった。

2016年6月2日になると、中冶集団は中国五鉱集団に併合された(鉱は中国語では石偏)。

これは、2015年12月8日に国務院の国有資産監督管理委員会が世界に並び立つ企業を創設するための戦略的再編を行った線上にあるが、事実、五鉱集団はフォーチュン500社に選ばれている。五鉱集団は探査から高度な処理まで、サプライチェーンのすべての部分に精通した巨大企業となり、2016年にはアフガニスタン政府との契約が更新された。契約ではアフガニスタン政府への手厚い保険料やロイヤリティの支払いが約束されているだけでなく、現地で緊急に必要とされている鉄道や発電所などのインフラの建設も約束されていた。

前述の中国商務部を中心とした「報告書」にあるアフガン地下資源分布と開発現状のマップには、「五鉱集団」ではなく、「中冶集団」の企業名があることから、このマップは少なくとも2016年以前の情報に基づいていることが分かる。

もっとも、これも長引く紛争で実行に移されることはなかったのだが、「2016年半ば」に転機が訪れた。

「2016年」からタリバンと中国が取引開始

実は2016年にタリバンにとって衝撃的な事件が起きた。

2016年5月21日にタリバンの最高指導者だったアクタル・マンスール師が米軍によって殺害されたのだ。殺害を命じたのはオバマ元大統領。これによりタリバンを和平交渉の席に就かせようとしていた機運は遠のき、タリバン代表がその2ヵ月後の7月18日から22日まで北京を訪れ、中国に救いを求めている。

「外国の軍隊により占領されている屈辱」を訴え、「国際会議で取り上げてほしい」と中国に要望した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中