最新記事
感染症対策

コロナワクチン、デルタ株に対し3カ月内に有効性低下 300万件対象の研究で=英オックスフォード大

2021年8月19日(木)10時54分
ロイター
ロンドンの病院でコロナワクチン接種の順番を待つ人々

英オックスフォード大学の研究チームは英国の一般市民から集めた検体を分析し、米ファイザー・独ビオンテック製および英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンを2回接種後のデルタ株に対する有効性が3カ月以内に低下するという結果を得たと発表した。写真はロンドンの病院で接種の順番を待つ人々。今年8月1日に撮影。(2021年 ロイター/Henry Nicholls)

英オックスフォード大学の研究チームは英国の一般市民から集めた検体を分析し、米ファイザー・独ビオンテック製および英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンを2回接種後のデルタ株に対する有効性が3カ月以内に低下するという結果を得たと発表した。

また、ワクチンを2回接種後にデルタ株に感染した場合、他の人に感染させるリスクがデルタ以外の変異株に比べて高い可能性も示された。

研究チームは鼻や喉の奥から300万件以上の検体を採取。2回目の接種から90日後のワクチンの有効性はファイザーが75%、アストラゼネカ製が61%と、接種から2週間後時点の85%と68%からそれぞれ低下した。有効性の低下は35歳以上の年齢層が、それより若い層より顕著だったとした。

研究を率いたサラ・ウォーカー教授は有効性が低下しても、「どちらのワクチンも2回接種すれば、デルタに対してなお高い効果がある。初期(の有効性)が非常に高いからだ」と指摘した。

アストラゼネカのワクチンは当初、オックスフォード大と共同で開発されたが、ウォーカー氏は開発に関与していない。

研究チームは時間の経過とともに有効性がさらにどの程度低下するかについて予測は示さなかった。ただ、ファイザー製とアストラゼネカ製のワクチンの有効性が2回目接種の4─5カ月内に同一水準に収束することを示唆した。

研究では、ワクチンを2回接種したのにデルタ株に感染した場合に、ワクチン未接種で感染した人と同等のウイルス量が確認されており、デルタ株の感染力の強さを浮き彫りにした。アルファ株(英国型変異株)が英国で主流だった時に比べて明らかに感染力が強まった。

米疾病対策センター(CDC)もまた、デルタ株に対するワクチン効果が数カ月で低下すると分析しており、米政府は18日、デルタ株のまん延を受け、9月20日からファイザーとモデルナ製ワクチンの追加接種(ブースター接種)を開始すると発表した。

オックスフォード大は英国立統計局(ONS)と英保健・社会福祉省と共同で研究を実施した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・インド、新たな変異株「デルタプラス」確認 感染力さらに強く
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中