最新記事

中国

習近平最大の痛手は中欧投資協定の凍結──欧州議会は北京冬季五輪ボイコットを決議

2021年7月16日(金)10時52分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
習近平

建党百周年式典における習近平中共中央総書記(7月1日) Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

バイデンが主導しようとしている対中包囲網は見せかけが多く軟弱だが、欧州議会がウイグル人権弾圧問題で中国の報復制裁に対して決議した「中欧投資協定の凍結」ほど、習近平にとって手痛いものはない。欧州議会は北京冬季五輪ボイコットをさえ呼びかけている。

EUがウイグル問題に関して制裁

今年3月22日、EU(欧州連合)主要機関の一つである「欧州議会」は、中国のウイグル人権弾圧に対して制裁を科すことを議決した。制裁対象となったのは以下の4人と一つの機構である。

 ●王君正(新疆ウイグル自治区・副書記、新疆生産建設兵団書記)

 ●陳明国(新疆公安庁庁長)

 ●王明山(新疆党委員会常務委員、政法委員会書記)

 ●朱海侖(新疆党委員会前副書記兼政法委員会書記)

 ●新疆生産建設兵団公安局

 (いずれも制裁内容は「ビザ発給禁止および海外資産凍結&取引禁止」)

ここには悪名高き新疆ウイグル自治区の陳全国・書記の名前がない。

その意味で、どちらかと言うと、軽い制裁だった。

EUの制裁に対する中国の報復制裁

ところが同日、中国政府は「虚偽と偽情報に基づくもの」としてEUに強く反発し、非常に激しい「報復制裁」を発動した。制裁対象は10人(欧州議会5人、加盟国議会議員3人、学者2人)と4つの機構で、以下のようになっている。

●欧州議会議員5人

・ラインハルト・ビュティコファー「対中関係代表団」団長(議長)(ドイツ)

・マイケル・ガーラー「台湾友好グループ」議長(ドイツ)

・ラファエル・グルックスマン「民主的プロセスにおける外国の干渉に関する特別議会委員会」 委員長(フランス)

・イルハン・キュチュユク「外交委員会」委員(ブルガリア)

・ミリアム・レックスマン「外交委員会」委員(スロバキア)

●加盟国議会の議員3人:

・オランダ議会のヨエル・ウィーマー・シャエルズマ

・ベルギー連邦議会のサミュエル・コゴラティ

・リトアニア共和国議会のドヴィル・サカリアン

●学者2人

・ドイツ人学者Adrian Zenz

・スウェーデン人学者Björn Jerdén

●4つの機構:

・EU理事会の政治・安全保障委員会

・欧州議会の人権小委員会

・ドイツのメルカトル中国研究センター

・デンマークの民主主義財団連合

(制裁内容:制裁対象の関係者とその家族は、中国本土、香港、マカオへの入国と、中国領土内での商取引を全面的に禁止する。)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ

ビジネス

テスラ自動車販売台数、4月も仏・デンマークで大幅減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中