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東京五輪

日本の状況を客観的に見れば、コロナによる五輪「中止」はあり得ない

THE TOKYO GAMES WILL GO ON

2021年7月14日(水)18時05分
ビル・エモット(ジャーナリスト、英エコノミスト誌元東京支局長)

しかし、それはあくまでも例外的な出来事だ。大半の先進国とは異なり、日本では、過去1年半の総死亡者数が平時より少なかった(コロナ禍で日本人がそれまでより注意深く行動し、移動を減らしたことが原因だろう)。

要するに、日本の「コロナ危機」により東京五輪が中止されることはあり得ない。そもそも、現在の日本は「危機」と呼べるような状況ではないからだ。

五輪中止を求める声がどんなに高まっても、日本政府がその主張を受け入れることは考えにくい。もし五輪開催を中止すれば、国のメンツがつぶれるし、IOC(国際オリンピック委員会)が開催中止に反対することはほぼ確実なので、巨額の損害賠償を請求される恐れもある。

もし、この夏の五輪の開催地がアメリカや中国の都市だったら、今の日本のような感染状況で五輪を中止するだろうか。中止することは考えられない。

東京五輪が中止されることがあるとすれば、それは世界の国々の選手団が参加を拒否し、開催を取りやめざるを得なくなるケースだけだ。東京五輪は、予定どおりの日程で幕を開ける可能性が高い。

<筆者は英エコノミスト誌元編集長、元東京支局長。1990年の著書『日はまた沈む』で日本のバブル崩壊を予測しベストセラーに。他にも日本の経済・社会に関する著書を多数執筆。>

©Project Syndicate

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