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ベラルーシ、ライアンエアー旅客機を緊急着陸 自国の反体制派を拘束

2021年5月24日(月)09時13分
ベラルーシの反体制派ジャーナリスト、ロマン・プロタセビッチ氏

ベラルーシ当局は23日、アテネからリトアニアに向かっていたライアンエアー機に対して、ミンスクの空港に緊急着陸するよう指示した。着陸後、乗客でベラルーシの反体制派ジャーナリスト、ロマン・プロタセビッチ氏(26、写真)が身柄を拘束された。写真は2017年4月にミンスクで撮影、提供写真(2021年 ロイター)

ベラルーシ当局は23日、アテネからリトアニアに向かっていた欧州格安航空会社(LCC)ライアンエアー旅客機に対して、危険物が仕掛けられた可能性があるとしてミンスクの空港に緊急着陸するよう指示した。着陸後、乗客でベラルーシの反体制派ジャーナリスト、ロマン・プロタセビッチ氏(26)が身柄を拘束された。欧州各国は、ベラルーシを厳しく非難している。

ライアンエアーの声明によると、同機の乗務員は、ベラルーシ当局からセキュリティー上の危険があるとの連絡を受け、最寄り空港のミンスクに着陸するよう指示された。ミンスク空港で乗客は降ろされ、当局によるセキュリティーチェックが行われた。

航空機追跡サイトflightradar24.comのデータによると、リトアニアの空域を通過予定だった2分前に航路を変え、ミンスクに向かった。

ベラルーシの国営通信ベルタよると、ルカシェンコ大統領の命令でミグ29戦闘機が緊急発進し、旅客機をミンスクの空港に誘導した。その後、危険物は発見されなかった。

プロタセビッチ氏は昨年、ポーランドを拠点とするメディア、ネクスタの編集者だった。ネクスタは、メッセンジャーアプリを通じてルカシェンコ大統領の反対デモを伝えるなど、反体制派の主要メディアのひとつとして知られる。

プロタセビッチ氏は現在、Belamovaと呼ばれる別のメディアで働いており、ツイッターでは皮肉を込めて自身を史上初の「ジャーナリスト・テロリスト」と表現している。ベラルーシでは、過激派の容疑で指名手配されており、暴動を組織して社会増悪をあおったとして起訴されている。

リトアニアのメディアDelfiが乗客の話として伝えたところによると、プロタセビッチ氏は、飛行機がミンスクに向かっていると分かった時、頭を抱えて震えていたという。その後、連行される際に「ここで私は死刑になる」と述べた。ロイターはこの報道内容を確認できていない。

プロタセビッチ氏が拠点を置く欧州連合(EU)加盟国であるリトアニアは、EUと北大西洋条約機構(NATO)に対して、国際的な対応を取るよう要求。NATOのストルテンベルグ事務総長はツイッターで、深刻で危険な出来事であり、国際捜査が必要だと強調した。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は、プロタセビッチ氏の即時解放を求め、「ライアン航空のハイジャック事件」の責任者に制裁を課すべきだとし、24日のEU首脳会議で対応を協議する考えを示した。

ポーランドのモラウィエツキ首相は「非難すべき国家テロ行為だ」と指摘した。



[ロイター]


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