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「米軍は中国軍より弱い」とアメリカが主張する狙いは?

2021年4月22日(木)11時02分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

どのような国でも、普通は「我が国の軍事力はこんなに強い」と自慢するものだ。

したがって、「わが軍はこんなに弱いです!」と自慢したりする背景には、よほどの目的があると考えなければならない。

まず昨年の国防総省(ペンタゴン)リポートは、そもそも「議会用」に発表されたものなので、米軍側が「国防費の予算を獲得するために、議会に向けて発信したもの」と解釈することもできる。

しかし、それは国際社会にもオープンにされるので、中国を含めた多くの国の知るところとなる。

となると、もっと別の目的があるだろうことが考えられる。

それを理解するには、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言したデービッドソン司令官が、公聴会で「(中国が)やろうとしていることの代償は高くつくと中国に知らしめるために、オーストラリアと日本に配備予定のイージス・システムに加え、攻撃兵器に予算をつけるよう議会に求めた」ということに注目しなければならないだろう。

すなわち、「中距離弾道ミサイルの日本配備」を求めているということだ。

前述したように米露間にはINF廃棄条約があったため、中国軍が中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていなかった。そこでトランプ元大統領はINF廃棄条約から脱退し(2019年8月2日)、アメリカも自由に製造することができるようにして、ポストINFを配備してくれる国を探していた。韓国の文在寅大統領は習近平に忖度して断ったが、オーストラリアの首相は親中派のターンブル氏から嫌中派のモリソン首相に替わったので、候補地としてはオーストラリアと日本ということになる。

6年以内に中国が台湾を武力攻撃すると言ったのは、日本には尖閣諸島があり、すぐさま影響を受けるだろうことを示唆したものだ。日本が自国を守りたければ、矢面に立つ覚悟を持てという意味で、「米軍は中国軍より弱い」と誇張して、本気で「中国軍に脅威を感じている」と日本にシグナルを発する。

もっとも、米軍全体の軍事力は中国軍より強かったとしても、第一列島線の戦闘において中国は、いざとなれば全ての軍事力(中国人民解放軍200万人以上)を投入することができるのに対して、有事の時にアメリカが投入できる軍隊は30万人にも満たない。それも在日米軍や在韓米軍および第七艦隊も含めてのことだ。これは全米軍の20%程度で、中国が100%の兵力を使えることと、中国には航空母艦からでなく「陸地にあるミサイル全てを使うことができる」というメリットがあることを考えれば、たしかに米軍は弱いことになる。

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