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「米軍は中国軍より弱い」とアメリカが主張する狙いは?

2021年4月22日(木)11時02分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
米中の国旗 

米中の国旗 Aly Song-REUTERS

米アジア太平洋軍の司令官は「米軍は中国軍より弱いし、中国は6年以内に台湾を武力攻撃する」と言っている。本当か? アメリカが、自国軍が弱いと主張する目的は何か?それは日本にどういう影響を与えるのか?

米軍が中国軍に負けると主張するアメリカ

2020年9月1日、アメリカ国防総省(DOD)が「中華人民共和国を含めた軍事・安全保障に関する2020年版報告書」を発表した(DOD Releases 2020 Report on Military and Security Developments Involving the People's Republic of China)

報告書はミサイルと造船技術に焦点を当て、ミサイルについては、中国軍が射程500~5500キロメートルの中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていないと指摘した。アメリカは元ソ連時代からロシアと締結してきた中距離核戦力(INF)廃棄条約に拘束されてきたからだ。

したがってもし米中が軍事衝突に至った場合、米軍は中国軍に勝つことができない恐れがあると報告書は書いている。中国軍が中距離ミサイルの大量発射という手法で、グアムや在日米軍基地を攻撃した場合に、米軍には抵抗手段がないというのが報告書の見方だ。

さらに、中国軍が現在200発以上保有する核弾頭数が、今後10年で2倍以上になる可能性があり、このうちアメリカにまで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)に装填する弾頭数は今後5年で200発以上に膨れ上がるだろうとしている。

海軍力に関しては、米軍の水上艦や潜水艦の数が293隻であるのに対して、中国海軍はすでに350隻を有しており、中国海軍の力は「世界最大である」と高く評価している。

このままではインド太平洋地域における米軍の優位は保たれないと強い危機感を表明した。

そのインド太平洋に関して、今年3月9日、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官が米上院軍事委員会の公聴会で、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言した。たとえばこちらのニュースや、こちらの情報で確認することができる。

一方、Clinton Hinote(クリントン・ヒノテ)という米空軍中将は、3月11日、米中両軍の軍事力に関するシミュレーションを行った結果、「ウォーゲームの傾向は、単に米軍が敗けるというだけではなく、敗けるまでの時間が年々短くなってきて、最近では瞬時に米軍が中国軍に敗ける傾向にある」という趣旨のことを言っている。

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