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ミャンマー政変が浮き彫りにした米外交の凋落

Who Lost Myanmar?

2021年2月10日(水)19時00分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌上級特派員)

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タイのミャンマー大使館前でクーデターに抗議するNLD支持者(2月1日) ATHIT PERAWONGMETHA-REUTERS

オバマ政権のアプローチを支持する人々は、当時のミャンマー外交にバイデン新政権の一部の人々が携わっていたことは事実だが、トランプ政権の4年間で、独裁主義が至る所で幅を利かせるようになったと語る。外交が難しくなり、民主的に権力を獲得しようというスーチーの努力も先が見通せなくなったというわけだ。

かつてはスーチーの存在が解決策だったとしても、今もそうなのだろうか。彼女が国内での人気に自信を持ち、自分の政治力を過大評価して、軍事政権に、特にミンアウンフラインに、過剰な要求をしてきたかもしれないという指摘もある。

「クーデターを回避するために彼女がある程度、譲歩できたのではないか」と、ジョージ・ワシントン大学のミャンマー専門家クリスティーナ・フィンクは言う。ミンアウンフラインを最高司令官にとどめるか、名目上の大統領職に就けることもあり得たかもしれないが、「NLDは歩み寄るつもりはなかった」。

スーチーに勝ち目はなかったとみる向きもある。「人々は、本当の彼女ではない理想を彼女に投影し続けてきた。『自分は政治家であって、それ以上ではない』と彼女はいつも言っていた」と、コーネル大学の物理学講師で映画監督でもあるロバート・リーバーマンは語る。彼は2012年にドキュメンタリー映画『彼らはミャンマーと呼ぶ』を制作し、スーチーに詳しくインタビューした。

「彼女に選択の余地はなかった。軍と、ミャンマーの外の世界との間でバランスを取りながら、彼女は綱渡りを強いられてきた」

その「外の世界」も、2019年に国際司法裁判所でロヒンギャに対する軍の残虐行為を擁護したスーチーを、もはや偶像視してはいない。

ミャンマーの新しい軍事政権は、かつては聖人とされたスーチーを支持する人々からの非難も以前ほどではないとみる。そしてトランプ時代に各地の独裁政権が勢いを得て、自分たちの安全地帯が広がっていると踏んでいる。

バイデン政権の外交政策チームの一部は、オバマ政権時代にミャンマーの将軍たちの説得を試みた。しかし、当時に比べると今のアメリカ政府には、ミャンマーの軍幹部に圧力をかける手段も限られている。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2021年2月16日号掲載>

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