最新記事

ミャンマー

【解説】ミャンマー・クーデター 国軍とスーチー、対立の背景

2021年2月2日(火)16時18分

ミャンマーでアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相と国民民主連盟(NLD)高官らが拘束された。NLD報道官が発表した。写真は、東京で行われたミャンマーのクーデターに抗議する集会で、スー・チー氏の肖像を掲げる集会参加者(2021年 ロイター/Issei Kato)

ミャンマーで1日朝、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相と国民民主連盟(NLD)高官らが拘束された。NLD報道官が発表した。

国軍は先週、NLDが圧勝した昨年11月の総選挙で不正があったとして「行動を起こす」可能性を示していたため、クーデターへの懸念が広がっていた。

スー・チー氏が率いるNLDは、11月8日の総選挙で対象議席の83%を獲得した。選挙はNLD政権への支持を問う国民投票代わりと見なされていた。

ミャンマーの統治者はだれか

ノーベル平和賞受賞者であるスー・チー氏(75)は、2015年の総選挙で地滑り的勝利を収めたことで、政権を事実上主導する立場になった。同氏は民主化を求める闘いにより長年自宅軟禁され、世界で尊敬を集める存在となっていた。

ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャの武装勢力と治安部隊が17年に衝突したのをきっかけに、何十万人ものロヒンギャが国外脱出し、難民となっている問題が深刻化。スー・チー氏の国際的評価は傷ついた。それでも国内では今も圧倒的な人気を維持している。

「ミャンマー軍」と呼ばれる国軍は、08年の新憲法と民政移管の立役者でもあり、自らを国の結束と同憲法の守り手と見なしている。政治体制で軍が恒久的な役割を果たす仕組みも制度化した。国軍は上下両院それぞれで議席の25%を軍人枠として確保。国防省、内務省、国境省を支配し、重要な政治的地位を築いている。

軍はなぜ11月の総選挙に異を唱えたか

国軍は、多くの選挙区で重複登録があったなどと訴えており、苦情に対する選挙管理委員会の対応にも不満を示した。主張している「不正」が選挙結果を覆すほどの規模だったか否かについては言及していない。

11年の民政移管完了まで与党だった国軍系の連邦団結発展党(USDP)も、同様の不満を訴えている。USDPは軍の代理組織と見なされているが、11月の選挙では476の議席中33議席しか獲得できず、屈辱を味わった。

NLDや他党は総選挙にどう反応したか

スー・チー氏は、自らが率いるNLDの勝利および国軍の苦情について発言していない。ただNLDは、国軍の主張に根拠は無く、選挙に不備があったとしても結果は変わらなかったとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド26年度予算案、財政健全化の鈍化示す フィッ

ビジネス

ウォーシュ氏のFRB資産圧縮論、利下げ志向と両立せ

ワールド

米特使、イスラエルでネタニヤフ首相と会談へ=イスラ

ワールド

シンガポール、宇宙機関を設立へ 世界的な投資急増に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 6
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 7
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 8
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 9
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中