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バイデン政権始動:最大の問題は共和党がトランプと縁を切れるかどうか

A FRESH START FOR AMERICA

2021年1月26日(火)11時10分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌上級特派員)

2度目の弾劾裁判の行方

だがアメリカの立憲政治のシステムは、怒りと分断の4年間に耐えて生き残った。ピュー・リサーチセンターの調べでは、トランプの退任時の支持率は史上最低の29%だった。そして国民の過半数が、最後には法の支配に従った。

一貫してトランプを擁護してきたマコネルでさえ、あの連邦議会議事堂襲撃には「大統領による扇動」があったと非難。また、暴動に参加した右翼の扇動家100人以上が逮捕され、数万人がSNSのアカウントを凍結された。

トランプが去ったことで、共和党内の過激派は大きな「旗印」を失った。もしも2度目の弾劾裁判で有罪となれば、トランプが国政に復帰する道はほぼ閉ざされる。

そうでなくとも、ニューヨーク州検事局などの司法機関が実業家時代のトランプに対する刑事捜査を進めているから、これから何年かは訴訟対応に振り回されることになるだろう。

そして共和党自体も、今後はイデオロギー的な再生を迫られるのではないか。なにしろ宿敵・民主党は(少なくとも今のところ)驚くほど結束を固めている。

民主党が雇用の維持・回復といった問題で(コロナ危機への対応もあって)左傾化を強めているのは事実だが、バイデンが政権の主要ポストに指名した人物はほぼ全員が経験豊富なプロであり、イデオロギーで動くタイプではない。

新政権の増税案や公的支出の野放図な拡大に共和党が抵抗するのは間違いないにせよ、老朽化したインフラの再建といった問題では超党派の合意ができる余地がある。

最大の問題は、「政党」としての共和党がトランプと完全に縁を切れるかどうかだ。遠からず始まる2度目の弾劾裁判で、上院共和党はどう出るのか。

1年前に行われた1度目の弾劾裁判では、共和党上院議員は団結して「無罪」に票を入れた。

しかし今回、マコネルは同僚の議員たちに、自身の良心に基づいて投票するよう促している。そして自分が「有罪」票を投じる可能性も示唆している。

トランプに有罪を宣告すれば、共和党はトランプ以前の姿を取り戻せるかもしれない。しかし熱烈なトランプ主義者との仁義なき戦争が始まる恐れもある。ちなみにトランプ自身は、新たな「愛国者党」の立ち上げも示唆している。

そうは言っても、トランプ自身が熱烈な支持者から見限られた兆候もある。直近の報道によれば、あの議事堂襲撃でも主導的な役割を果たした極右集団「プラウド・ボーイズ」はSNSへの投稿で、トランプを「どうしようもない負け犬」とこき下ろしたらしい。

これでトランプも終わり、とは言うまい。だが「トランプ後のアメリカ」が始まったのは確かだ。

From Foreign Policy Magazine

<2021年2月2日号「バイデン 2つの選択」特集より>

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