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「#ジョンインちゃん、ごめんね」 養父母による虐待死に国民が涙、BTSとARMYも追悼

「虐待致死」か「殺人」か

今回の裁判に至るまでにも、この事件に関しては世間をざわつかせる騒動があった。ソウル南部地検は、里親2人の拘束当時、「児童虐待致死容疑」を適用したものの公訴状に「殺人罪」を記載せず世論から批判が上がっていた。

批判の声が大きくなると検察は専門解剖を依頼、ジョンインちゃんの死亡原因結果を受けて「殺人罪」を適用した。

これに対して里親側の弁護士は「児童虐待致死疑い」を主張した。ちなみに、韓国の法律では、児童虐待での死亡量刑は4〜7年だが、殺人となれば、基本10〜16年と大きな違いがある。

このジョンインちゃん虐待致死事件が報道されるやいなや、人びとは声を上げ始めた。韓国大統領府のウェブサイトに設置された国民請願掲示板には、里親により重い刑を望む請願があがり、1月2日に人気調査報道番組「それが知りたい」が事件を特集するとさらに多くの人に広まった。

SNSでの追悼のほか、墓参する女優も

その後、SNSを中心に「#정인아 미안해(ジョンインちゃん、ごめんね)」キャンペーン参加者が急増し、現在インスタグラムだけでも10万人近くの投稿が寄せられている。

芸能界からも声を上げるスターたちが登場した。世界的人気グループBTSのメンバーのジミンもSNSでハッシュタグキャンペーンに参加したところ、それを見たBTSのファンたち「ARMY」も投稿を始め、さらに陳情書の提出方法をシェアし多くのファンたちが提出したという。

また『宮廷女官チャングムの誓い』などで国民的人気女優イ・ヨンエは、自身の双子の子供たちと一緒にジョンインちゃんの眠る墓を訪れ、その後小児患者への治療費として1億ウォンを寄付した。他にも、ユ・ビョンジェ、チャン・ユンジュら有名人たちが続々と児童虐待被害者のための関連団体に寄付をしている。歌手ションは、ジョンインちゃんを忘れないためにも追悼マラソン開催を呼び掛けているという。

さらに、本人も里親として2人の娘を育てている女優シン・エラは、SNSで「今この瞬間もジョンインのような被害者が泣いている」と、これ以上被害者が増えて欲しくないという願いを投稿し注目を集めた。

追悼のトレンドワードの悪用まで

一方で、この注目度を利用しようとする不届きな輩もいる。SNSでハッシュタグ「#정인아 미안해(ジョンインちゃん、ごめんね)」が人気ワードになると、中華料理屋、マカロン専門店、デザートカフェなどが、自身のお店や商品の宣伝投稿にジョンインちゃんのハッシュタグを付けはじめ非難が集中した。

また、「ジョンインちゃん、ごめんね」というロゴのついたTシャツ、タオル、スマホケース、クッション、アイポッズケースなどのグッズまで登場。虐待死を利用していると多くの抗議を受けることとなった。

グッズの発売元は、「ジョンインを忘れないためにも、より広くこの事件を広めたかった」と反論したものの、結局謝罪文を公表し販売を中止する事態となった。

筆者の多くの韓国人の知人たちも自身のSNSにジョンインちゃんへの追悼を投稿している。虐待内容も衝撃的だったが、なによりも里親に引き取られる前と後のジョンインちゃんの写真に写った表情に大きなショックを受けた。同じ人物とは思えないほど違っていたからだ。いくら里親が弁解の言葉を並べても、ジョンインちゃんの表情が全てを物語っている。裁判は今始まったばかりだが、里親二人にどのような判決がでるのか今後も見守っていきたい。

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