最新記事

政権移行

議事堂の次は就任式が危ない?トランプ支持者の襲撃に備えるワシントン

Experts Warn of Inauguration Threat to Soft Targets, 'Fully Expect Violence'

2021年1月13日(水)17時49分
ナビード・ジャマリ、トム・オコーナー

連邦議会議事堂を占拠したトランプ支持者(1月6日)Jack Gruber/USA TODAY via REUTERS

<米テロ専門家がバイデンの大統領就任式とその周辺の危険を予測>

アメリカ現代史上最も深刻な政治危機のなか、ジョー・バイデン次期大統領の就任式が1月20日に行われようとしている。ドナルド・トランプ大統領の忠実な支持者たちが、権力の移行を妨害しようと式典を狙ってくるのではないか、という警戒感が強まっている。だが専門家らは本誌に対し、ターゲットは必ずしも就任式とは限らないと警告する。

「警備の手薄な施設や人の多い場所、重要なインフラは、国内のテロリストや政府を困らせたい人々にとって以前から魅力的なターゲットだ」と、国土安全保障省でインフラ防護担当次官補を務めていたブライアン・ハレルは本誌に語った。

大統領選におけるバイデン勝利認定を阻止しようとしたトランプ支持者が連邦議会議事堂を襲撃し、5人が死亡、数人が負傷したのは1月6日のことだった。暴力と騒乱が収まったのちに、議会ではなんとか投票集計を終えることができた。だが今、バイデンがアメリカ大統領に就任するための式典に関連して、さらなる騒動発生の危険もささやかれている。

就任式が近づくにつれて、国内テロ対策を専門とする機関に勤めていた当局者らは、注意が必要だと警告している。「平和的な権力の移行は祝うべきだが、懸念が高まっているこの時期には、警戒が欠かせない」と、ハレルは語った。

次回の準備はしているが

法執行機関は、暴徒の議事堂への乱入を許した今回の失敗から学んだはずだ、と指摘するハレルは、トランプの任命により、サイバーセキュリティ・インフラストラクチャー・セキュリティ庁(CISA)の新設ポストについていたが、2年後の昨年8月に辞任した。

「1月6日に起きた重大な警備上の失敗にかんがみて、法執行機関も次の過激派やトラブルメーカーの襲撃に対処する心構えはできているだろう」と、ハレルは言う。「就任イベントの周辺で暴力行為を最小限に抑えるために何重もの警備や、ターゲットの隔離、増派チームの配備が予定されている」

だがこれらの措置が実施されても、流血の惨事が予想される、と彼は言う。「街頭での暴動は十分にありうる。最大の懸念は、武器が使われること、安全を確保した防御線の外での集団暴力、重要なインフラ(変電所など)が攻撃対象になることだ。だが国土安全保障省(DHS)が指定した国家特別安全保障イベント(NSSE)として、式典中は公園管理事務所、シークレットサービス、国土安全保障省、および連邦議事堂警察が、安全を確実にするためにかなり大きな存在感を示すことになる」

国土安全保障省は当初、1月19日から21日を国家特別安全保障イベント(NSSE)に指定し、シークレットサービスに安全対策を任せた。その後、ワシントン市長ミュリエル・バウザーからの公的な要請によって、期間の開始を1月13日に前倒しすることになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北京市、住宅購入規制さらに緩和 需要喚起へ

ビジネス

フジHD、株式買い増しはTOBでと旧村上系から通知

ビジネス

26年度の超長期国債17年ぶり水準に減額、10年債

ワールド

フランス、米を非難 ブルトン元欧州委員へのビザ発給
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中