中国TPP参加表明の本気度――中国側を単独取材

2020年11月28日(土)20時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

国有企業に関する問題点――「国進民退」は解消しているのか?

Q:では具体的な問題点に入っていきましょう。まず中国は「国進民退」(国有企業が前に出て、民間企業が後退している)と言われて久しいですが、この問題が解決しないと、TPP11の加入条件は満たされないと思います。これに関してどういう改革が成されましたか?

A:2008年の金融危機以降、およびこの度のコロナ禍以来、中国の国内外に「国進民退」を批判する声が出てきたのは不思議ではありません。たしかに2008年の金融危機以降、中国は4億人民元を投資してインフラ建設と国有企業に重きを置きました。そうしなければ、あの金融危機を乗り越えることが出来なかった。しかし2010年辺りからは同時に中国が世界の工場でなくなりつつある現象とも相まって、中国の東南海岸沿いにあった中小企業は破産の憂き目に遭い、内陸部への移転を余儀なくされました。またこの度のコロナ禍によって零細企業は激しい打撃を受けていますが、これ等の現象を以て「国進民退」と非難することは必ずしも全面的に正しいとは言えません。

これは経済発展プロセスの周期性と段階性の一つに過ぎないという側面を強く持っていると個人的には思っています。

習近平は2018年11月、中国の民間企業は中国の全税収の50%以上を占めており、国内総生産の60%以上を、そして技術イノベーションの70%を民間が占めていると言っています。

一方、国家統計局のデータによると、2000年から2016年の間に、中国の全工業企業の資産に占める国有持株会社の資産の割合は67%から38%に減少し、全工業企業の主な事業収入に占める国有持株会社の主な事業収入の割合は50%から21%に減少し、全工業企業の利益に占める国有持株会社の利益の割合は55%から約17%に減少しています。

これらは、中国の民間経済が成長していること、国有経済の割合が相対的に低下していることを示すのに十分なのではないでしょうか。もちろん、中国の国有経済の改革をさらに深化させる余地はあります。たとえば、混合所有制の改革、国有資産を直接管理することから国有資本が投資・出資し、直接経営するのではなく株のみを保有することなどは、いずれも中国政府の市場経済の地位を強化するための決意と勇気を示していると言っていいでしょう。

越境電子商取引に関して

越境電子商取引(越境EC、cross-border e-commerce)とは国境を超えて行われる通信販売のことである。これに関して質問した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルとの貿易全面停止、トルコ ガザの人道状況

ワールド

アングル:1ドルショップに光と陰、犯罪化回避へ米で

ビジネス

日本製鉄、USスチール買収予定時期を変更 米司法省

ワールド

英外相、ウクライナ訪問 「必要な限り」支援継続を確
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中