最新記事

女性問題

韓国の外タレ「さゆり」の選択「今日から私は母になる」 体外受精選んだ日本女性が儒教の国を変える

2020年11月26日(木)20時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

保守的だった韓国社会にも変化

ところが、今月18日に公表された、韓国統計庁が毎年発表している「社会調査結果」の2020年版の統計によると、韓国人の13歳以上の男女の30.7%(男性32.6%、女性 28.8%)が「未婚でも子供をもつことができる」に賛成している。また、59.7%が「結婚しなくても同棲だけでいい」と答えるなど、韓国人はこれまで結婚について比較的保守的なイメージがあったが、ここ数年で変化の流れが速まっているように感じる。

さゆりさんが施術のために日本へ帰国したことも、韓国では大きく取り上げられた。彼女が日本で精子バンクを利用したのは、現在韓国では未婚者への人工授精施術が不可能だったからだ。

現在日本を含む、アメリカ、イギリス、スウェーデン、スペイン、ベルギーなど多くの国が未婚女性への人工授精施術が認められ、出産事例も多い。一方、韓国では2017年に制度改正され、医療機関が未婚女性への人工授精施術をしても処罰されないことにはなっているものの、「大韓産婦人科学会内部倫理規定」で禁じられており実際には施術ができない状態だ。

この点について、韓国では今、女性の権利・妊娠の選択自由をテーマに議論の的になっている。

国会議員たちもさゆりに共感?

さゆりさんの出産については、韓国の公営放送KBSのニュースでも大きく取り上げられ、規定改正への動きが国会議員たちの間でも論議されるようになった。特に「共に民主党」のハン・ジョンエ政策委議長が先頭に立ち、関連法律検討と改善をするよう働きかけている。

先日の公開会議でハン議員は、「保健福祉省は、不必要な指針の修正を行うため、ただちに協議措置を行ってください。 指針の補完と併せて制度改善に必要な事項については、国会で検討いたします」と宣言した。さらに、「共に民主党」キム・テニョン院内代表も、国会でも制度改善にむけて調整を始めると発言し、今後この問題に対する議論が本格化する見込みである。

ひとりの日本人女性の行動が、韓国の女性たちの生き方を左右する規制見直しのきっかけとなったのだ。

今、家族の形は様々である。筆者の友人のブラジル人男性は、同性婚をしてパートナーと子供を育てている。このように欧米では、同性同士のカップルが養子をもらうことはすでに、特別ではない世の中になった。

「子どもには、男女の親が2人いなくてはいけない」「シングルペアレントでは、子供は不幸になる」「血が繋がっていなくては自分の子供ではない」「女は子供を産むべきだ」
今もなお、出産については様々な意見がある。どの意見が正しいか、人それぞれでかまわない。

ただし、それを押し付けることはあってはならない。誰が何と言おうと、技術の進歩により選択肢が増えていき制度改正は進む。これからはシングルであっても、未婚であっても、男女/女女/男男でも、子供を産んだり育てたりする権利を選べる世の中になっていくのだ。いつの日か男性の妊娠技術が開発されれば、家族の形はさらに広がるのではないだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

モディ印首相、中国との「関係改善に尽力」 習主席と

ワールド

インドネシア大統領、訪中取りやめ 首都デモが各地に

ビジネス

中国製造業PMI、8月は5カ月連続縮小 内需さえず

ワールド

ロシア軍参謀総長、前線で攻勢主張 春以降に3500
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマンスも変える「頸部トレーニング」の真実とは?
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    「体を動かすと頭が冴える」は気のせいじゃなかった⋯…
  • 5
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 6
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 9
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中