最新記事

女性問題

韓国の外タレ「さゆり」の選択「今日から私は母になる」 体外受精選んだ日本女性が儒教の国を変える

2020年11月26日(木)20時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

韓国で芸能活動をする日本人女性さゆりさんは、体外受精で母になることを選んだ。「今日から私は母になる」と語るさゆりさん。画像は彼女のYouTubeチャンネルより

<女性の生きづらさが社会問題になっている国で、ひとりの日本人女性の行動が波紋を呼んで──>

日本では知られていなくても、海外に在住してその国で有名になりタレントとして活躍している日本人は少なくない。"さゆり"こと、藤田小百合さんもそのひとり。

米国留学中に知り合った韓国人留学生を通じて、韓国文化にハマり、2006年には韓国に留学。そして2007年韓国で大人気だった外国人女子トークショー番組「美人たちのおしゃべり」出演してからは、その不思議ちゃんキャラが韓国人にウケ、今現在も韓国でタレント活動を続けている。

そんな彼女がとったある選択が、今韓国社会に一石を投じていることをご存じだろうか?

さゆりさんは、今月4日韓国で男の子を出産した。去年の10月、生理不順を理由に産婦人科で検査を受けたところ、卵巣年齢がなんと48歳という診断結果だった。その時点で彼女は40歳。医師から今後自然妊娠する可能性の低さを説明されたときの彼女の心情を考えると心が痛む。

同年代の筆者も、この問題には何度もぶつかってきた。自分のキャリア、パートナーとの問題、迫ってくるタイムリミット。今はその気がなくても10年20年後になって後悔するのではないだろうか......。そのたびに人生の選択を強いられる気分だ。 

パートナーはいないが母になることを選択

さゆりさんの決断は早かった。「今日から私は母になる」

10月の診断から4カ月後の2月20日には日本へ帰国。未婚でパートナーもいなかった彼女は、精子バンクにて精子提供を受けて体外受精施術を受けた。

その後、3月19日に1度目の施術で見事に妊娠。彼女のYouTubeチャンネル「さゆりのVLOG」の動画を見ると、医師からは卵巣の状態や実年齢からみても「5〜7回は施術が必要だろう」と言われていたと語っている。カメラの前で妊娠検査キットを握りしめ、「妊娠した!」と喜びながら、同時に少し不安そうな複雑な表情はとてもリアルだ。

その後、お腹の中の赤ちゃんはすくすくと成長し、今月無事出産したという。出産から12日経った今月16日、彼女がインスタグラムでファンに向けて出産報告をアップすると、たちまち韓国では注目が集まった。

未婚女性が精子バンクからの精子提供で子供を産むことについて、賛否両論飛び交うだろうとは予想していたが、コメント欄を見ると「応援します!」というコメントが押し寄せている。

コメントを読むと特に若者や女性たちから多くの支持を集めているようだ。「出産は女性の選択肢の一つであり、それを一人でも選んださゆりさんはかっこいい」という意見が多い。

もちろん反対派も存在する。理由は大きく2つに分かれているように見える。特に精子バンクを利用したことについて「これが当たり前になると、エスカレートしていき、精子の選り好みが始まるのではないか? ショッピングするように良い遺伝子を求めることは、ある意味命の選択になるのでは?」という意見もあった。

ただ大部分は「離婚など理由があって仕方なく片親になるのではなく、初めから分かっていながらシングルマザーになるのはどうなのか?」「子供が欲しいというエゴなのでは?」という指摘だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

UBS、クレディS買収以来初の四半期黒字 自社株買

ビジネス

中国外貨準備、4月は予想以上に減少 金保有は増加

ワールド

中国、エアバスと航空分野の協力深化へ 覚書に署名=

ワールド

サウジアラムコ、第1四半期は減益 配当は310億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中