最新記事

中国

中国はトランプ再選を願っている

2020年10月24日(土)22時08分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そのヨーロッパを特に取り上げて示すと下図のようになる。
gallapchart.png
アメリカのリーダーシップに対するヨーロッパ諸国の信頼度推移(原典:ギャラップ)

薄い緑色が「支持・是認する(approve)」を表し、濃い緑が「支持・是認しない(disapprove)」を表している。

圧倒的に濃い緑が多く、しかも「支持・是認しない」が増加の一途をたどっている。ちょうどトランプが大統領に当選した2016年を境にピッタリと逆転しているところを見ると、アメリカのリーダーシップ失墜はアメリカの大統領がオバマからトランプに移った時期と一致することが分かる。

これは即ち、「トランプ大統領に対するヨーロッパ諸国のジャッジメント」に相当し、ヨーロッパ諸国が日に日にトランプ大統領を信用しなくなり、それがアメリカという国家に対する信用度を無くさせ、結果的にアメリカの国力・威信を失墜させているという現実を表しているのである。

米中覇権争いが進行している中、アメリカの威信がここまで顕著に落ちてくれれば、中国としては歓迎しないはずがない。

4.アメリカの国際社会からの離脱は中国に有利

習近平政権はそうでなくとも「人類運命共同体」を外交的スローガンとして打ち出し、何とかして一国でも多く中国側に引き付けて国際社会における影響力を高めようとしている。そのような中、TPP脱退、パリ協定脱退、イラン核合意脱退、WHO脱退......と、アメリカが自ら国際社会の組織から次から次へと脱退していってくれるので、中国にとってはこんなにありがたい大統領はない。トランプは「大統領に再選されるため」という個人的な目先の利益のためにアメリカの国益を自らの手で潰していってくれるので、中国はトランプが再選されることを願っているのである。

5.バイデンは強敵――大統領になってほしくない

一方、バイデンが当選すれば、彼は常識的なのでアメリカは信用を回復するかもしれないし、TPPやパリ協定あるいはWHOなどに戻ってくるかもしれない。それでいてアメリカ国民の対中感情が悪いので、対中強硬策は継続するだろう。これは中国にとって脅威で、最も望ましくない状態である。したがってバイデンが当選することを中国は望んでいない。

トランプの対中制裁やペンス副大統領あるいはポンペオ国務長官の対中非難声明は、中国人民の愛国心と団結を強化し、中国共産党による一党支配体制を正当化することに寄与しているので、中国にとっては、それほど悪いことではない。

このまま行けばアメリカ国内の南北戦争再現か

中国のネット空間における、割合に知的なサイトであるzhihu知乎が「2020年アメリカ大統領選においてトランプが再選されると思いますか?それともバイデンが勝つと思いますか?」という見出しで、興味深い分析をしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ブラックロック、AI投資で米長期国債に弱気 日本国

ビジネス

OECD、今年の主要国成長見通し上方修正 AI投資

ビジネス

ユーロ圏消費者物価、11月は前年比+2.2%加速 

ワールド

インドのロシア産石油輸入、減少は短期間にとどまる可
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カ…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 8
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 9
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中