最新記事

米移民問題

トランプの「大罪」移民親子引き離し 545人の子どもが今も親と再会できず

White House Says Migrant Parents 'Declined to Accept Their Kids Back'

2020年10月22日(木)15時05分
ジェイソン・レモン

国境で引き離されたが再会できたホンジュラス人の親子。生後15カ月の息子ホアンは5カ月間、一人アリゾナで収容されていた(2018年7月27日) Edgard Garrido-REUTERS

<トランプが大統領選で再選されようとされまいと、米政府の手でいい加減に引き離された親子に対する非道は贖わなければならない>

トランプ政権の厳しい移民政策の下、2018年に米南部のメキシコ国境地帯で親から引き離された移民の子どものうち、545人が今も親と再会できていないことが判明した。ホワイトハウスの報道官は、トランプ政権は親子を再会させようとしたが、家族が子どもたちの引き取りを拒否したと説明した。

トランプ政権は2018年、不法入国者を厳しく取り締まる「ゼロ・トレランス(寛容ゼロ)」政策を導入。メキシコ国境地帯で大勢の移民の子どもを親や保護者から引き離して別々に収容したが、全米から強い批判を受けてすぐにこの措置を停止した経緯がある。

米自由人権協会(ACLU)が10月20日に裁判所に提出した文書によれば、この時に親と引き離された子どものうち545人の親が今も見つかっていない。ホワイトハウスは21日、再会させようとしたが、親が子どもを取り戻したがらなかったと主張した。NBCニュースによれば、ホワイトハウスのブライアン・モーゲンスターン報道官は「彼らの多くが子どもの引き取りを拒否した。政権側の努力が足りなかったわけではない」と述べた。

ACLU移民の権利プロジェクトの副部長を務めるリー・ゲラントは公共放送ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)へのコメントで、親子が再会できていない現状について「ゾッとする」として、次のように語った。

「子どもたちの中には、親と引き離された時にまだ赤ん坊だった子もいる。人生の半分以上、あるいはほぼ全てを、親をもたずに過ごしている子もいるだろう」

「どれだけ謝罪しても済まない問題」

全米移民フォーラムのアリ・ヌーラニ最高経営責任者(CEO)は本誌に、現在の状況は「アメリカの苦悩であり恥だ」と述べた。

「家族という価値を重視する国の政権が親子を引き離し、彼らを再会させようにもどこに行ったかわからないなんて、残酷な上に怠惰だとは」と彼は批判した。

トランプ政権による移民の扱いを繰り返し非難してきた民主党議員たちは、厳しい言葉でトランプ政権を批判する。

ミネソタ州選出のイルハン・オマル下院議員は、「これはひどい児童虐待だ」とツイートした。「彼らはアメリカが自分たちを動物のように檻に入れ、親から無理やり引き離し、泣き止ませるために薬漬けにしたことを一生忘れないだろう。どれだけ謝罪しても済まない問題だ」と投稿し、移民関税執行局(ICE)の廃止を呼びかけた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

オランダ政府、ネクスペリアへの管理措置を停止 対中

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

中国、日本産水産物を事実上輸入停止か 高市首相発言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中