最新記事

核軍縮

米ロの新START1年延長に現実味 ロシアの核弾頭凍結案を米歓迎

2020年10月21日(水)11時00分

ロシアは20日、米ロの新戦略兵器削減条約(新START)を1年間延長するために、米国が同様の措置を取る場合は核弾頭の保有数を凍結する用意があると述べた。フセヴォロシュスで昨年3月撮影(2020年 ロイター/ANTON VAGANOV)

ロシアは20日、米ロの新戦略兵器削減条約(新START)を1年間延長するために、米国が同様の措置を取る場合は核弾頭の保有数を凍結する用意があると述べた。米国も歓迎する意向を示し、新STARTの延長が現実味を帯び始めた。

新STARTは来年2月に期限が切れることになっている。米大統領選を2週間後に控えたこの日に提示されたロシアの案は、両国の溝を幾分埋める内容に見える。

米国は先週、新STARTを無条件で1年間延長するとするロシアの提案を拒否。全ての核弾頭保有数を凍結するような内容でなければ「話にならない」とした。

20日にロシア外務省が公表した声明は米ロの距離が近づいたことを示唆する。「ロシアは新STARTを1年間延長し、米国とともにこの期間中は核弾頭の保有数を『凍結する』政治的義務を負う用意ができている」と述べた。

米国務省のオルタガス報道官はこれを歓迎。声明で、米国は「核軍備管理に関する問題を進展させようとする(ロシアの)意欲」を高く評価するとした上で、「米国には検証可能な合意に向け迅速に会合を開く用意がある」とし、ロシア側に会合開催を促した。

ただ、核弾頭凍結の順守を互いにどのように確認するのかは疑問だ。

新STARTは米ロ双方の合意があれば、最長で5年間の延長が可能。新STARTを延長できれば、両国関係が緊迫する中でまれな明るい材料となるが、延長できなければ両国の核兵器の均衡を保ってきた大きな柱がなくなることになり、両国関係が一段と緊迫するとみられる。

ロシア外務省は米国が追加で要求を出してこなければ核弾頭の凍結と1年間の延長が可能となると述べた。延長することで、核兵器制限についてより深く話し合う時間ができると付け加えた。

米国は昨年、地上発射型の中距離ミサイル(射程500─5500キロ)保有を禁じる米ロ中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱。ロシアの条約違反を理由にしたが、ロシア側は否定している。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

新発10年国債利回りが1.705%に上昇 17年半

ビジネス

日本郵政、通期純利益予想3200億円に下方修正 物

ビジネス

ニデック、半期報告書のレビューは「結論不表明」

ビジネス

みずほFGが通期上方修正、純利益27%増の1兆13
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中