最新記事

2020米大統領選

トランプ再選に重要な郊外票 多様化進み支持獲得にハードル

2020年8月21日(金)10時10分

8月18日、2016年の米大統領選でトランプ氏勝利の鍵を握ったのは、都市郊外の有権者だった。今年も11月3日の大統領選に向け、同氏と民主党候補のバイデン前副大統領が郊外票を巡る戦いを繰り広げている。写真は米バージニア州の州都リッチモンドの投票所、2019年11月5日撮影(2020年 ロイター/Ryan M. Kelly)

2016年の米大統領選でトランプ氏勝利の鍵を握ったのは、都市郊外の有権者だった。今年も11月3日の大統領選に向け、同氏と民主党候補のバイデン前副大統領が郊外票を巡る戦いを繰り広げている。

トランプ氏は最近、自身が郊外を守っていることを「郊外に住む主婦」は歓迎しているとコメント。16日付ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙への寄稿では、郊外に低所得者向け住宅を供給するバイデン氏の政策について「ディストピア(理想郷を意味するユートピアの逆)的な構想」だと批判した。

米国の郊外地域は、第2次世界大戦後のベビーブームのころに都市周辺の近郊に広く形成され、当初は白人の住む地域という明確な定義のイメージがあった。郊外の家族は、多くが夫、即ち男性の所得で暮らし、妻は専業主婦で、ひとりで家事をするというのがお決まりだった。

しかし、現在のように米国ほど多様化した国をひとくくりに定義づけるのは困難な作業であり、「郊外」の定義さえ難しくなった。主要都市から通勤圏の郊外も、昔とは様変わりした。

郊外の人口密度は増し、多様化が進んだ。ブルッキングス研究所のウィリアム・フレイ氏の分類に基づくと、米国で「郊外」と定義される郡の人口は国全体の約36%を占め、2000年の33%から増えている。

多様性

郊外にある郡は他地域に比べるとまだ、白人が多い傾向がある。都市部はもっと多様性がある。

しかし、フレイ氏の分類によると、主な郊外の郡の人種構成は全般に、国全体での構成に近い。

トランプ氏はカーソン住宅都市開発長官と共同執筆の形を取った前述のWSJコラムで、今や黒人とヒスパニック系のうち、郊外で暮らす割合が過半数を占めるようになったと主張した。ただ、どの郡を「郊外」に含めての話かは明確にしていない。

フレイ氏の分類に基づくと、米国の大都市上位100カ所を取り巻く郊外の郡は488ある。都市部に住む黒人数は、郊外での約2倍だ。ヒスパニック系で見ると、この差は縮まる。

オバマ前政権は連邦政府から住宅支援を受けている地域に対し、住宅での特定人種疎外の慣行を調査し、その是正計画を義務付けた。だが、トランプ政権はそうした規則の無効化を今年7月に打ち出した。

子供と同居

米疾病予防管理センター(CDC)の分類によると、子供が同居する家族の割合は、都市部より郊外の方がわずかに大きいだけだ。しかし、小規模な町や農村部と比べると、郊外の同居率の大きさはもっと目立つ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領、プーチン氏との直接会談主張 明言

ビジネス

ソフトバンクG、1―3月期純利益5171億円 通期

ビジネス

日産、再建へ国内外の7工場閉鎖 人員削減2万人に積

ビジネス

日産社長、ホンダとの協業協議「加速している」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 7
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 9
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中