最新記事

選挙

香港法曹界、政府の議会選延期は法律違反の可能性と指摘

2020年8月3日(月)16時27分

香港の弁護士でつくる香港大律師公会は、9月に予定されていた立法会(議会)選挙を1年延期する香港政府の決定は法律に違反している可能性があるとの見解を示した。写真は香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官。7月に撮影(2020年 ロイター/Lam Yik)

香港の弁護士でつくる香港大律師公会は、9月に予定されていた立法会(議会)選挙を1年延期する香港政府の決定は法律に違反している可能性があるとの見解を示した。

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は31日会見し、新型コロナウイルス感染者数の増加を理由に選挙を延期すると発表した。政治的な配慮はないとした。

立法会選挙は香港国家安全維持法(国安法)が6月末に施行されて以来初めての選挙となるはずだった。国安法は、国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託を犯罪行為と定め、最高刑として終身刑を科す。

香港の選挙法制は最長14日間の延期しか認めていない。ただ、植民地時代の法律によって公共の安全への脅威に対応する際は政府に広範な権限が認められている。

香港大律師公会は2日付の声明で、選挙法はより新しいもので、選挙時の公衆衛生上の危険に具体的に対応する内容になっているため、「一般的には」古い法律よりも優先されるべきだと指摘。

選挙を延期するために有事法制を発動すれば、「法律違反となる可能性がある」とした。

選挙延期発表の前には民主派候補12人の立候補資格が取り消されているため、新型コロナ感染拡大を受け延期を決定したとの当局の説明に懐疑的な見方が多くある。

昨年の区議会(地方議会)選挙で大躍進した民主派は、立法会選挙で歴史的な過半数奪取を目指していた。

林鄭月娥長官は立法会議員の任期満了に伴う立法上の空白を解消するために香港政府は中国の全国人民代表大会(全人代=国会)に助けを求めていると表明。

これについて大律師公会は、香港政府は「異議申し立ての可能性を回避」するために中国政府を引き入れ、香港の基本法など現地法の規定を実質的に無効化しようとしていると批判。「香港での法の支配を損ねる」行為だと批判した。

ポンペオ米国務長官は、立法会選挙の延期について、「香港が2度と選挙をできなくなる可能性は高い」と述べて非難した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・【独占】押谷仁教授が語る、PCR検査の有用性とリスクとの向き合い方
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・ロシア国立研究所、コロナワクチンの臨床試験が終了 10月から接種開始へ
・韓国、コロナショック下でなぜかレギンスが大ヒット 一方で「TPOをわきまえろ」と論争に


2020081118issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザの食料「兵器化」、戦争犯罪に該当 国連が主張

ワールド

ドイツ、25年度予算案を閣議了承 投資と利払い急増

ビジネス

独IFO業況指数、6月は予想以上に上昇 景気底入れ

ワールド

韓国特別検察、尹前大統領の拘束令状請求=聯合ニュー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 10
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中