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2020米大統領選

大統領選で負けても続投する? トランプが「予言」する最悪のシナリオ

Trump Could Lose-And Still Win

2020年7月28日(火)19時10分
ティモシー・ワース(元米上院議員)、トム・ロジャーズ(本誌米国版記者)

これは国家安全保障上の非常事態だと、トランプは宣言する。そして司法省に、激戦4州における「不正」を捜査するよう命じる。この4州の州議会は、いずれも共和党が多数派を握っているため、「国家安全保障に関する捜査」が終了するまで、選挙人の任命を行わないと決定する。

民主党は裁判を起こして、4州でのバイデンの勝利を確認する判決を求める。連邦最高裁は票の再集計こそ認めないが、大統領には国家緊急権に基づき捜査を命じる権限があると認定する。その一方で、選挙人団による投票は予定どおり12月14日に行われなくてはならないと判示する。

だが、激戦4州では司法省の捜査が終了していないため、これらの州の選挙人は投票に参加しない。このためバイデンもトランプも、勝利に必要な「選挙人団の過半数」を獲得することができない。

この場合、合衆国憲法は、大統領の選出を下院に委ねることを定めている。ただし、1人1票ではなく、各州に1票が与えられる。つまり民主党の下院議員が多い州はバイデンに、共和党の下院議員が多い州はトランプに投票することになる。

現在、共和党の下院議員が過半数を占める州は26で、民主党のほうが多い州は23。ペンシルベニアは同数だ。従って、たとえペンシルベニアがバイデンに投票することにしたとしても、トランプが26票、バイデンが24票を獲得して、トランプが大統領選の勝利を手にする──。

いくらなんでもそんなシナリオはあり得ないだろう、などと思ってはいけない。トランプはBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動が激化した6月初旬、1807年の反乱法に基づき軍にデモを沈静化させる可能性を示唆したばかりだ。

勝つためなら何でもする

本誌の元国際版編集長であるファリード・ザカリアは、ジョン・ボルトン前国家安全保障担当大統領補佐官によるトランプ政権暴露本を次のようにまとめている。「つまりドナルド・トランプは、自分の生き残りと成功のためなら、いかなる代償も払うし、いかなる取引もする。そして、いかなるルールも曲げる」

では、私たち市民はどうすればいいのか。

それは、アメリカを陥れるトランプの策略を、声高に、かつ一貫して暴くことだ。また、全米に「人民の防火壁」を築く必要がある。それは「民主的な統治システムを傷つけることは許さない」という強い意思表示だ。

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