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習近平はなぜ香港国家安全維持法を急いだのか?

2020年7月7日(火)11時05分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

香港国家安全維持法の目的は外国籍裁判官の無力化 TYRONE SIU-REUTERS

習近平が国際社会からの非難を承知の上で突き進むのは父・習忠勲のトラウマがあるからであり、来年の建党百周年までに香港問題を解決したいからだ。民主運動が大陸に及ぶのを避けるためなどという現実は存在しない。

香港国家安全維持法の目的は外国籍裁判官の無力化

2020年6月30日に全人代常務委員会で可決された「香港維護国家安全法」は、その日の夜11時から発効し、香港で実施されることとなった。日本語的には「香港国家安全維持法」と訳すのが通例になっているので、ここでもその名称を使うこととする。

同法は大きく分けると、「国家分裂罪、国家転覆罪、テロ活動罪、外国勢力と結託し国家安全を害する罪」の4つから成り立っているが、中でも注目しなければならないのは第四十四条である。第四十四条には以下のような趣旨のことが書いてある(概要)

●香港特別行政区行政長官は、全てのレベルの裁判所の裁判官の中から、若干名の裁判官を選び、国家安全に危害を及ぼす犯罪の処理に当たらせる。

●行政長官が指名した裁判官の任期は1年とする。

●裁判官の任期内に、万一にも裁判官が国家安全を侵害するような言動をしたならば、直ちに国家安全担当裁判官の資格を剥奪する(筆者注:もし任命した裁判官が不適切だった場合は他の裁判官を指名することができるようにして、北京の意向通りに判決を出す裁判を常に執行させる。だから任期も短い)。

●国家安全犯罪に関する裁判は国家安全犯罪担当裁判官が審議する(筆者注:外国籍裁判官に民主活動家の裁判を担当させない)。

これは何を意味しているかというと、これまで何度も(これまでのコラムで)書いてきたように、香港は中国に返還されるに当たって、イギリス統治時代に使ってきたコモンロー(英米法)を採用することになったため、司法もコモンローに従い裁判官もトップ以外は全て外国籍だ。最高裁判所も高等裁判所も、かつてのコモンウェルス(イギリス連邦)の国々(イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど)の国籍の裁判官によって構成されている。

だから民主活動などによって逮捕されても、裁判ではせいぜい1ヵ月ほどの懲役刑が科せられるだけで、まるで小旅行にでも出かけたような爽やかな顔をして出所してくる。

そのため昨年は逃亡犯条例改正案を香港政府に出させて中国本土で裁判にかけようとしたが、激しい抗議に遭い廃案になってしまった。

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