最新記事

プラットフォーム

フェイスブックに対する広告ボイコットが止まらない

Facebook Ad Boycott May Be Tip of Iceberg for Zuckerberg's Social Network

2020年7月1日(水)17時55分
ジェーソン・マードック

広告出稿を停止し、契約を見直す企業が増えているとはいえ、あらゆる企業が「憎悪を利益にするな」運動を声高に支持しているわけではない。

マイクロソフトは5月に、不適切なコンテンツの隣に広告が表示されることに懸念を示し、5月に米国内のフェイスブックとインスタグラムへの広告出稿を一時停止していた。これは、今回のボイコット運動に先立つ動きだ。

「憎悪を利益にするな」運動は、5月25日にミネアポリスで警察官に殺害されたジョージ・フロイドの事件をきっかけに、反人種差別とBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動が世界的に広がるなかで、弾みがついた。

フェイスブックに対する非難が大きくなったのは、「略奪が始まると銃撃が始まる」というドナルド・トランプ大統領の明らかな脅しを含む投稿の削除も警告もフェイスブックが拒んだのがきっかけだ。「コンテンツの良し悪しを決めるのはプラットフォーム企業ではない」と、ザッカーバーグは責任逃れのようなことを言った。

そこで人権擁護団体はフェイスブックの一番の泣きどころ、つまり収益に打撃を与えるよう企業に訴えた。広告はフェイスブックの主な収入源で、ガーディアン紙によれば、年間700億ドルの収益の約98%を占めている。

広告停止だけではすまない

だが、「憎悪を利益にするな」運動が最終的に世界最大のSNSであるフェイスブックに持続的な打撃をもたらすかどうかについて、専門家の意見は分かれている。

ソーシャルメディアの研究者でコンサルティング会社バッテンホールの創設者ドリュー・ベンビーは本誌に、ボイコットは「フェイスブックというブランドを、世間の目に映るイメージの点でも、財務の点でも傷つける」可能性があると語った。金銭的損害がすでに生じているからだ。

大手広告主が出稿を一時的に停止したことから、フェイスブックの市場価値は6月26日の時点で500億ドル以上急落した。株価は約8%下落し、ザッカーバーグの純資産は大きく減少した。

「この影響が世界規模になると、さらに大きな問題になる」と、ベンビーは本誌に語った。「フェイスブックは、今起こっていることを氷山の一角と捉え、素早く行動を起こすべきだ。このボイコット運動が世界中に広がると、ソーシャルメディアのユーザーはより安全な環境のプラットフォームに移動する。フェイスブックは広告収入を失うだけではすまず、ユーザーを失うことになる」

「ボイコットの主導者は、過激な行動や憎悪を引き起こす投稿に対してフェイスブックがより強い姿勢を取り、『プラットフォームの過激化と憎悪の拡散を食い止めるためのポリシーの常識的な変更』を実施するよう求めている。これは不合理な勧告ではない」と、ベンビーは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 4
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 8
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中