最新記事

生物

南極大陸で発見されたサッカーボール大の「謎の化石」の正体が明らかに

2020年6月25日(木)19時23分
松岡由希子

約6600万年前の軟卵だった......

<2011年に南極大陸で発掘されていた化石が、2番目に大きい卵であることが明らかになった......>

チリ国立自然史博物館(MNHN)の古生物学者デビット・ルビラル=ロジャース氏らによって2011年に南極大陸で発掘され、チリ国立自然史博物館に所蔵されていた化石が、既知の動物で2番目に大きい卵であることが明らかとなった。

「謎の化石」は約6600万年前の軟卵だった

米テキサス大学オースティン校の古生物学者ジュリア・クラーク教授は、2018年にチリ国立自然史博物館を訪れた際、ルビラル=ロジャース氏から、押しつぶされたサッカーボールのような「謎の化石」を見せられ、「しぼんだ卵ではないか」と直感した。その後、テキサス大学オースティン校の研究チームが詳細に分析し、2020年6月17日、学術雑誌「ネイチャー」で研究成果を発表した。

これによると、この「謎の化石」は約6600万年前の軟卵で、そのサイズは長さ11インチ(約27.9センチ)、幅7インチ(約17.8センチ)と、これまでに発見された軟卵で最も大きく、既知の動物の卵として二番目に大きい。

研究論文の筆頭著者であるテキサス大学オースティン校のルーカス・ルジャンドル博士研究員は、顕微鏡を使って化石試料を観察し、化石が卵であることを示す膜の層を確認している。この卵は、非鳥類型恐竜の卵よりも大きいが、その構造は異なっており、むしろ現存のヘビやトカゲの卵とよく似ていた。

体長7メートル以上の海生爬虫類ではないかと推定

この卵は孵化したとみられ、どのような生物のものなのかはわかっていない。ルジャンドル博士研究員は、現存する爬虫類259種の体長と卵の大きさなどをもとに系統発生解析を行い、この卵にいた生物は体長7メートル以上の海生爬虫類ではないかと推定している。

2020bradyi.jpgcredit: Francisco Hueichaleo.


この卵が発見された岩石層からは、成体の標本とともにモササウルスやプレシオサウルスの幼生も見つかっている。このことから、この場所は、幼生の生育環境に適した水の浅い入り江であったのではないかとみられている。

米プリンストン大学の進化生物学者メリー・ストダード准教授は、米公共ラジオ局(NPR)で「このような軟卵の化石は非常に珍しい」と述べ、「軟卵の化石がなかなか見つからないことが、脊椎動物の卵の進化の解明において課題であった。この発見は、さらなる解明をすすめるうえで重要なパーツとなるだろう」と評価している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、パウエルFRB議長の解任に再び言

ワールド

イランとイスラエル、再び互いを攻撃 米との対話不透

ワールド

米が防衛費3.5%要求、日本は2プラス2会合見送り

ビジネス

焦点:米で重要鉱物、オクラホマが拠点に 中国依存脱
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    全ての生物は「光」を放っていることが判明...死ねば…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「巨大キノコ雲」が空を覆う瞬間...レウォトビ火山の…
  • 8
    マスクが「時代遅れ」と呼んだ有人戦闘機F-35は、イ…
  • 9
    イギリスを悩ます「安楽死」法の重さ
  • 10
    「まさかの敗北」ロシアの消耗とプーチンの誤算...プ…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中