最新記事

韓国

横領、虐待...「ナヌムの家」慰安婦被害者の施設で起こったこと

The House of Suspicion

2020年6月4日(木)11時30分
朴順梨(ライター)

慰安婦問題の歴史館を併設し、ドキュメンタリー映画でも知られるナヌムの家だが、寄付金の5%以下しか施設に使われていなかった(2019年10月) PARK SOON-I

<寄付金の5%以下しか支援に使っていない、ケガをしても病院に連れていくのを拒否した、慰安婦問題に関心すらない......。日本でもよく知られる「ナヌムの家」職員が経営陣を内部告発した>

ナヌムは「分かち合い」の意味を持つ。1992年にソウル市内に開館し、95年にソウル近郊の京畿道広州市に移転した「ナヌムの家」は、慰安婦被害者の支援施設だ。これまでに20人以上が暮らしてきた福祉施設である傍ら、慰安婦問題の歴史館を併設し、日本人職員も在籍。日本からも多くの見学者が訪れてきた。

そのナヌムの家の職員7人が、幹部や経営法人による不正行為を告発した。

告発者の1人である日本人職員の矢嶋宰によると、2019年3月、ナヌムの家を運営する「社会福祉法人大韓仏教曹渓宗ナヌムの家」法人理事会が累計10億円以上の寄付金を集めながら、被害者支援にはその5%以下しか使っていないことが分かった。

「19年には約2億6000万円の寄付金が法人口座に振り込まれたが、ナヌムの家の施設用口座に移されたのは約640万円で、これは光熱費など維持費に充てられた。残りは不動産購入や建物の建設費用に回されていた」

同年6月にはある入居者が、経年劣化で傾いたベッドから落ちてケガをした。しかし施設の事務長は当初、病院に連れて行くことを拒否。「お金の乱費になるから」と、買い替えも拒否した。結局職員が命令を無視し、別の安全なベッドに替えたという。

これまでも、持ち合わせがなく冬に夏用の靴を履いていた入居者に靴を買い与えなかったり、一人一人の体調に合わせた食事ではなく、全員に同じものを供したりするなど疑問に思う点があった。

そこで職員たちは独自に内部調査を開始。すると運営法人が施設周辺の土地を買い集め、慰安婦被害者たちが亡くなった後は入居スペースをつぶし、約80室の有料高齢者施設に造り替える計画を立てていることが分かった。寄付金はその準備資金に充てられていたのだ。さらに葬儀費用も当人や遺族に支払わせ、香典は法人が徴収していた。

10年前も告発があった

慰安婦被害者を支援するための寄付金なのに、これでは横領ではないか。彼女たちの生活や健康を無視するのは高齢者虐待ではないか――。

職員たちは19年7月に改善要望書を提出するが、理事会はこれを黙殺。20年に入って韓国政府の行政機関「女性家族部」や、施設がある京畿道と広州市に陳情したが、こちらも一般的な監査のみで終わった。そこで7人は5月19日、韓国の放送局MBCの調査報道番組『PD手帳』に出演し、実名顔出しで告発を行った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石油市場に十分な供給、ホルムズ海峡通過船舶は増加=

ビジネス

独インフレ率、3月は前年比2.8%に伸び加速 イラ

ワールド

原油相場が「金融市場に大きな影響」、高い緊張感持っ

ワールド

追加協調放出含め、さらなる対応の準備必要と発言=G
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 6
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中