最新記事

感染症対策

「収入減少者に毎月10万円給付を、検査能力向上が重要」 政府諮問委員・小林慶一郎インタビュー

2020年5月15日(金)21時15分

政府の新型コロナ感染症に関する「基本的対処方針等諮問委員会」に今月12日、新たに加わった東京財団政策研究所・研究主幹の小林慶一郎氏(慶大客員教授)はロイターのインタビューに応じ、コロナ対策で収入減少に直面した個人に毎月10万円の現金給付を行うべきだと述べた。都内で14日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

政府の新型コロナ感染症に関する「基本的対処方針等諮問委員会」に今月12日、新たに加わった東京財団政策研究所・研究主幹の小林慶一郎氏(慶大客員教授)は15日、ロイターのインタビューに応じ、コロナ対策で収入減少に直面した個人に毎月10万円の現金給付を行うべきだと述べた。収入減少を申告した人を対象とし、給付総額は年間で最大24兆円程度になるとした。

また、新型コロナのワクチンや特効薬が開発され、世界規模で行き渡るには3─4年程度かかると予想。経済の停滞を避けるには、財政拡張政策を継続すると同時に、大規模な検査を実施できる能力を確立し、陽性者を隔離して陰性者の不安感を払しょくすることが不可欠であると指摘。検査と隔離の能力が大幅に向上すれば、経済のⅤ字回復も可能であるとの見解を示した。

こうした政策提言は、安倍晋三首相はじめ政権幹部に近く、伝える意向だと述べた。

月10万円給付、対象は1000ー2000万人

10万円給付の対象者は、コロナ危機による収入減少を申告した人とし、事前の審査はしないことが特徴。事後に「不正申告」が発覚した場合は、確定申告などで「上乗せ課税」して不正分を徴収するとしている。対象者は1000万人から2000万人になると想定。最大で24兆円程度の資金が必要になると説明した。

コロナ危機による経済への打撃が想定よりも強かった場合は、10万円給付を1年間だけでなく数年間に延長することも必要になると述べた。

財源は赤字国債の発行で賄い、その多くを日銀が購入すれば、国債暴落などの市場の混乱は起きないと予想。銀行などの民間金融機関もコロナ危機の継続下では、企業業績の不透明感の強まりなどでリスク回避傾向が続き、国債への選好度は高まり、その面からも日本国債の信用度は揺るがないとの見通しを示した。

他方、コロナ感染リスクへの警戒感は継続し、国境をまたぐ移動は活発化しない期間が長期化すると予想。世界的に空運関連の企業や航空機産業の市場は収縮が予想され、業界再編などの大きな動きが予想されると述べた。また、空運に限らず交通系企業の需要は当面、減少傾向が続くのではないかと語った。

世界的な経済の停滞が長期化する可能性が高まっており、企業は短期的な資金繰りだけでなく、資本の毀損に直面しかねないと指摘。資本の毀損が目立った企業に対しては、公的資金の注入が必要になるとの見解も示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=最高値更新、CPI受け利下げ期待高ま

ビジネス

米シスコ、5─7月期売上高見通し予想上回る AI支

ワールド

ニューカレドニアに非常事態宣言、暴動の死者4人に 

ワールド

再送-EU、ジョージアに「スパイ法案」撤回要請 「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中