最新記事

マスク外交

欧州で強まる反中感情

Coronavirus Dispute Highlights Growing EU Skepticism Towards China

2020年4月30日(木)17時31分
デービッド・ブレナン

中国から送られたマスクの荷下ろしをするドイツ軍兵士(4月27日、ライプチヒ) Kim Hong-Ji-REUTERS

<新型コロナウイルス感染爆発の弱みにつけ込み、マスクや防護服を送ってくる中国を欧州主要国は警戒を強めている。インフラ建設の支援と見せかけて途上国を「債務の罠」に陥れたり、ユーロ危機でギリシャや中欧諸国に取り入った前科があるからだ>

EUは先週、中国が新型コロナウイルスに関する偽情報をソーシャルメディアで拡散した疑いがあるという報告書を発表したが、中国側はこれを即座に否定した。

中国は偽情報で被害を受けた側であり、流出元ではないと、中国外務省の耿爽(コン・ショアン)副報道局長は定例会見で述べた。

報道によれば、EUの報告書は中国の圧力で事前にかなりトーンダウンされたものだという。だがパンデミック(世界的大流行)震源地の責任追及を逃れようと欧州の感染拡大地域に対して「マスク外交」を展開する中国に、EUが警戒感を高めていることは明らかだ。

ヨーロッパでは今、偽情報の拡散など中国の悪質な行動に対する警戒感と、それを防ぐ対策を求める声が高まっていると、カーネギー国際平和財団の欧州プログラムを率いるエリク・ブラットバーグは本誌に語った。

「コロナ危機で中国に対する懐疑的な見方が強まりつつある。EUと中国の関係は緊張度を増しており、今後もギクシャクするだろう」

「脱中国」は不可能だが

コロナに対する初期対応の失敗をごまかそうとする中国の試みは裏目に出そうだ。欧米諸国は中国の公式の感染者数と死者数が少な過ぎるのではないかと疑問視しており、初期に警告を発した医師らの発言を封じたことなど、中国当局の透明性の欠如を非難している。一部の欧州諸国は、中国が医療支援として送ったマスクや検査キットが不良品だったとして返送した。

「今のところコロナ危機後の中国では、(情報隠しや言論統制など)好ましくない傾向が強まっているようだ」と、ブラットバーグは言う。

中国の統治システムが根本的に変わらない限り、「中国とEUの関係は今後ますますこじれるだろう」と、ブラッドバーグは見る。もちろん中国の統治システムが変わることは望み薄だ。

とはいえ、コロナ危機は公衆衛生上の危機だけでなく経済危機でもある。最も豊かな国々でさえ記憶にある限り最悪の景気後退に直面しており、経済の回復には貿易と国際協力が欠かせない。

中国の経済的な影響力は無視できない。欧米諸国は長年中国に依存してきたサプライチェーンを自国に取り戻したいだろうが、中国との関係を完全に断つことはまず不可能だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、マスク氏盟友アイザックマン氏をNASA

ビジネス

10月マネタリーベース7.8%減、14カ月連続のマ

ワールド

政府閉鎖さらに1週間続けば空域閉鎖も、米運輸長官が

ワールド

UPS機が離陸後墜落、米ケンタッキー州 負傷者の情
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中