最新記事

ニューヨーク

感染爆発のニューヨーク州知事「人工呼吸器あと6日分」

New York Governor Says State's Ventilator Stockpile Will Last 6 Days

2020年4月3日(金)11時51分
マシュー・インペッリ

病院に改造した大規模会議場で記者会見するクオモ(3月23日) Mike Segar−REUTERS

<患者は急増中なのに人工呼吸器があと6日しかもたない! それでも住民がパニックを起こさないのは、クオモ知事の手腕>

新型コロナウイルスの爆発的感染と戦う米ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は4月2日、このまま患者が増え続ければ、あと6日で人工呼吸器が足りなくなると言った。「今のペースだと、人工呼吸器の備蓄はあと6日分しかない」と、クオモは2日の記者会見で言った。「この調子で患者が増え続ければ、あと6日しかもたない」

クオモによれば、現在、1日約350人のコロナ新患が運び込まれるのに対し、人工呼吸器の備蓄は2200台だという。

クオモの発表は、ニューヨークで毎日感染者が激増し続ける中で行われた。ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、同州の感染者は9万2000人を超え、死者は2373人にのぼっている。普通なら市民はパニックに陥っていたかもしれないが、クオモは3月半ばから毎日の記者会見で、このままだと人工呼吸器が足りなくなること、それに対して州がどのような手を打っているかということを、日々克明に説明してきた。この会見を毎日聞いてきた人にとっては、驚きも不安もないはずだ。

常識にとらわれない救命策

3月半ばからクオモが人口呼吸時の支援を求めていた連邦政府は、最近になってようやく4000台の人工呼吸器を送ってきたが、ニューヨーク州ではすでに人工呼吸器不足を補う様々な方策を用意していた。
「不足に備えて、特別の方法を用意している。これで命を救うことができる」と、クオモは言った。「まず、我々は州内の人工呼吸器がどの病院にどれだけあるかを把握した。もし不足すれば、北部の病院からマンハッタンの病院に運ぶことができる」
それからクオモは、他のいくつもの人工呼吸器調達法を説明した。緊急でない手術を中心し、本来麻酔に使う人工呼吸器を麻酔なしで使う、一台の人工呼吸器を患者2人で使う、などだ。

一台の人工呼吸器を2人で使うというのは前代未聞のことだが、クオモは安全性のテストを重ねてこれにゴーサインを出した。「完璧ではないが、十分使用に耐える」と、クオモは言った。また大学の獣医学部にある動物用の人工呼吸器も動員した。

感染爆発の間、クオモはニューヨーク市のビル・デブラシオ市長とともに、人工呼吸器と医療品を送ってもらうよう連邦政府に呼びかけ続けてきた。2日の記者会見でクオモは、連邦政府はニューヨークの苦境を「十分にわかっていた」はずだが動かなかった、と言った。
この会見直後、ドナルド・トランプ大統領はツイッターでやり返した。「他の州と違ってニューヨークは遅かった。もっと強く要請すべきだった。愚痴を言っていないで物資を探せ、よく働くクオモ君」

202003NWmedicalMook-cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

SPECIAL EDITION「世界の最新医療2020」が好評発売中。がんから新型肺炎まで、医療の現場はここまで進化した――。免疫、放射線療法、不妊治療、ロボット医療、糖尿病、うつ、認知症、言語障害、薬、緩和ケア......医療の最前線をレポート。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資

ワールド

イスラエルがシリア攻撃、少数派保護理由に 首都近郊

ワールド

学生が米テキサス大学と州知事を提訴、ガザ抗議デモ巡

ワールド

豪住宅価格、4月は過去最高 関税リスクで販売は減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中