最新記事

感染症対策

親中? 失策? 資金拠出停止に直面するWHOとはどんな組織か

2020年4月19日(日)12時50分

誰が拠出するのか

拠出金には義務的な「分担金」と、自発的な「任意拠出金」の2種類がある。WHOの予算は2年制だ。2020-21年予算は約48億5000万ドルで、その前の2年間から9%増えた。

分担金は、加盟国の富や人口など経済規模に応じて計算される。

任意拠出金は、拠出者がしばしば、特定の地域ないし、ポリオ(小児まひ)やマラリア、貧困地域の乳幼児死亡といった特定の疾病・症例への対応を目的に決める。

慈善活動財団や、欧州連合(EU)の欧州委員会といった多国間で構成される機関も主要な拠出者だ。

米国は分担金と任意拠出金と合わせて最大の拠出国で、19年末までに18─19年分として8億ドル超を拠出した。

米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏と妻の慈善団体、「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」の拠出額が2番目に多く、3番目は英国だ。

過去の主な成功と失敗

WHOが広く信頼を勝ち取ったのは、1970年代に行った10年に及ぶ天然痘根絶の活動だ。ポリオ根絶の世界的な取り組みも主導しており、これは最終の段階に差し掛かっている。

ここ数年は、コンゴ(旧ザイール)のエボラ出血熱やブラジルのジカ熱に対しても調整役を担っている。

現在の新型コロナでは、WHOの指導力は多方面から称賛されているが、トランプ米大統領からは、中国寄りで、拡大の初期段階に間違った助言をしたと非難されている。

トランプ氏は今週、WHOが「基本的な職務に失敗した」とし、米国の拠出停止を表明した。この発表は世界の多くの指導者から批判を呼んでいる。

WHOは過去に、09─10年の新型インフルエンザ流行に過剰反応したとして非難されたことがある。14年の西アフリカでのエボラ出血熱発生に対しては、十分に迅速な対応をしなかったとの批判が広がった。このときのエボラ出血熱死者はその後、1万1000人を超えた。

Kate Kelland

[ロンドン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・新型コロナウイルス、モノの表面にはどのくらい残り続ける?
・中国・武漢市、新型コロナウイルス死者数を大幅修正 50%増の3869人へ
・イタリア、新型コロナウイルス新規感染者は鈍化 死者なお高水準
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(17日現在)


20200421issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月利下げは不要、今週の利下げも不要だった=米ダ

ビジネス

利下げでFRB信認揺らぐ恐れ、インフレリスク残存=

ワールド

イスラエル軍がガザで攻撃継続、3人死亡 停戦の脆弱

ビジネス

アマゾン株12%高、クラウド部門好調 AI競争で存
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中