最新記事

児童虐待

テキサスの病院で虐待が疑われる子ども急増、新型コロナと関連も

Suspected Child Abuse Deaths Could Be Linked to COVID-19

2020年3月25日(水)17時26分
シャンタル・ダシルバ

自宅隔離の間、子どもに他人の目は届かなくなる(写真はイメージ) Jonathan Ernst-REUTERS

<小児科病院で同日に子どもが2人、外傷で死んだ。虐待が疑われる入院も増えている。医師たちは、自宅隔離による家庭内ストレスとの関連を疑っている>

テキサス州フォートワースにある小児科病院で、2つの家庭の就学前児童2名が1日のうちに死亡し、同病院の医師らは、新型コロナウイルス感染症の流行との間接的な関連が疑われると話している。

クック小児病院の「児童の権利保護リソースおよび評価(CARE)」チームのジェイミー・コフマン医長が3月23日に本誌に語ったところによれば、医師らは児童虐待が原因と疑われる子どもの入院数が増えていることに気づき、すでに警告を発していたという。

クック小児病院の場合、医師が警察などから児童虐待の可能性の評価を求められる症例数は、通常は1カ月に6~8例ほどだ。しかしここ1週間、児童虐待が疑われる負傷で入院した子どもは7人にのぼったとコフマンは言う。

コフマンによれば、医師が評価を求められる症例は、必ずしも児童虐待の結果とは限らない。だが、「ここ1週間で目にしたケースについては、すべて虐待だとわれわれは考えている」とコフマンは語る。うち6人は入院が必要だった。

残り1名の就学前児童は、入院させる前に救急救命室で死亡したという。

自宅で孤立する子供たち

コフマンによれば、死亡した就学前児童はこの子だけではない。先週の同じ日にもう1人が外傷により死亡した。

コフマンは児童2名の身元は明らかにしなかったが、1人の死因は頭部外傷で、もう1人は明らかな外傷を負って救急救命室に運び込まれ、そこで死亡が確認されたという。

「これらの外傷は、明らかに児童虐待の懸念を抱かせるものだった。現在は、確認のための検死を待っているところだが、言い訳のしようがない明らかな外傷が見られた」とコフマンは話している。

この病院では通常、児童虐待に関係する可能性のある死亡件数は1年間で「6件ほど」だが、児童虐待が疑われる症例がいきなり急増したことは警戒する理由になる、とコフマンは述べる。医師たちはこの急増について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに関係している可能性があると警告している。

「(COVID-19に)関係していると断言することはできない」とコフマンは語る。「単なる偶然ではないと断言することはできないが、(自宅隔離などで)家庭内ストレスが増加すると、児童虐待のリスクが上昇することがわかっている」

「アメリカが不況のさなかにあったときにも経験した。身体的虐待の件数が増加したのだ」とコフマンは言う。

医師たちは、子どもたちが必要な支援を確実に受けられるようにしなければならないと感じているという。

「虐待は、孤立したところで起きる犯罪だ」とコフマンは言う。「子どもたちは自宅で孤立しており、誰の目も届かない状況に置かれている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中マドリード協議2日目へ、TikTok巡り「合意

ビジネス

英米、原子力協力協定に署名へ トランプ氏訪英にあわ

ビジネス

中国、2025年の自動車販売目標3230万台 業界

ワールド

トランプ氏、首都ワシントンに国家非常事態宣言と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中