最新記事

「ジャンクフードは脳の食欲制御機能を損なわせる」との研究結果

2020年2月20日(木)18時45分
松岡由希子

満腹でもスナック菓子やチョコレートなどが食べたくなる..... ArtMarie-iStock

<豪マッコーリー大学らの研究で、ジャンクフードが、記憶や食欲の制御をつかさどる脳の海馬の機能をも損なわせることが明らかとなった>

野菜や果物が豊富で、全粒穀物や豆類を多く摂取する健康的な食生活に対して、西洋型食生活は、赤肉や精製穀物、高脂肪の乳製品、飽和脂肪酸を中心とし、塩分や糖分が高いのが特徴だ。

こうした西洋型食生活を長期にわたって継続すると、肥満や糖尿病、高血圧、心血管疾患などを引き起こす。そしてこのほど、ジャンクフードが、記憶や食欲の制御をつかさどる脳の海馬の機能をも損なわせることが明らかとなった。

満腹でもスナック菓子やチョコレートなどが食べたくなる......

豪マッコーリー大学らの研究チームは、2020年2月19日、英国王立協会のオープンアクセス科学ジャーナル「ロイヤル・ソサエティ・オープンサイエンス」で「20代の健康な成人に1週間にわたってジャンクフードの食事を実践させたところ、海馬の機能が損なわれた」との研究成果を発表した。

研究チームは、心身ともに健康な20代の成人110名を対象として1週間にわたる実験を行った。被験者の半数に通常と同様の食生活を送らせる一方で、残りの半数にはファストフード中心の食事をさせ、ベルギーワッフルを食べるよう指示。

実験期間の初日と最終日には、被験者全員が実験室でトースト・サンドとミルクシェイクからなる朝食を食べ、その前後に、記憶検査を実施するとともに、コーンフレークなど、糖分が多い食品への渇望スコアを測定した。

その結果、ジャンクフードを1週間継続させると、記憶検査のスコアが下がり、満腹のとき、スナック菓子やチョコレートなど、口当たりのよい食品をより食べたくなることがわかった。

海馬の機能が弱まると、満腹になっても美味しそうに見える......

海馬には、満腹になると食にまつわる記憶を抑制する働きがあると考えられている。それゆえ、満腹のときは、ケーキがそれほど美味しそうに見えないわけだ。

研究論文の筆頭著者であるマッコーリー大学のリチャード・スチーブンソン教授は「海馬の機能が弱まると、満腹になっても食の記憶が蘇り、美味しそうに見えてしまう」とし、「食べたいという欲求を抑えきれずにより多く食べ、これによって海馬の機能がさらに損なわれるという悪循環に陥る」と考察している。

英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のレイチェル・バッターハム教授は、英紙ガーディアンにおいて、「ジャンクフードがヒトの記憶や食欲制御を損なうことを示すものだ」とこの研究成果を評価したうえで「一連のメカニズムはまだ解明されておらず、より精緻な脳画像手法を用い、さらなる研究をすすめる必要がある」と指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国4月輸出、予想上回る8.1%増 ASEAN向け

ワールド

ゲイツ氏、45年までにほぼ全資産2000億ドル寄付

ビジネス

三菱重の今期、ガスタービンや防衛好調で最高益に 受

ワールド

ガザ南部ラファ近郊で「激戦」とハマス、イスラエル兵
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 10
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中