最新記事

CIAが読み解くイラン危機

米イラン危機で世界経済が景気後退に突入する?

THE COST OF WHAT COMES NEXT

2020年1月21日(火)16時20分
サム・ヒル(作家、コンサルタント)

イランのミサイル攻撃を受けて声明を発表するトランプ(1月8日) REUTERS/Mike Segar

<市場は冷静な反応を見せるが今後の展開は読めない。報復の応酬に陥れば景気減速が1世代続く恐れも。本誌「CIAが読み解くイラン危機」特集より>

アメリカとイランの対決の第1ラウンドが終了したようだが、世界経済はほとんど動じていないらしい。衝突をエスカレートさせないつもりと見受けられる両国の態度が安心感を誘い、市場は持ち直した。
イラン危機カバー.jpg
米軍が駐留するイラク国内の複数の空軍基地を、イランが弾道ミサイルで攻撃したのは1月8日(現地時間)のことだ。同日、ニューヨーク株式市場ではダウ平均が当初2万8556ドルの値を付けたが、ドナルド・トランプ米大統領の声明発表の直前に2万8637ドルまで上昇し、発表後には2万8768ドルに値上がり。スタンダード&プアーズ(S&P)500社株価指数とナスダック(米店頭市場)総合指数は終値で史上最高値を更新した。

つまり、イランをめぐる問題が世界経済に大きな悪影響を与えることはないと、市場は判断している。少なくとも今のところは──。

市場の冷静さが続くかどうかは今後の行方次第だ。多くの専門家は全面衝突の可能性はないとみるが、危機が終わったとは考えていない。

イランのミサイル攻撃は、1月3日にアメリカがイラン革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官を殺害したことへの「明白かつ公的な報復であり、イラン国民向けに必要な行動だった。一方で数カ月以内に、ひそかな報復が行われる可能性も高い」。ナショナル・イラニアン・アメリカン協会のシナ・トゥーシ上級リサーチアナリストはそう指摘する。

トゥーシに言わせれば、イランには外交上の選択肢が存在しない。「トランプと(マイク・)ポンペオ(米国務長官)は要求を明言していないが、イランは既に身動きが取れず、差し出せるものも残っていない。アメリカの『最大限の圧力』の一環である制裁で、イラン経済は極度に苦しい状態にある」

イランが何をするか、それはいつかは誰にも分からない。「報復すべき相手はアメリカか、トランプか。イランがトランプだと判断すれば、今年の米大統領選などへの影響を狙ったタイミングになるだろう」と、スタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授(経済学)は語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アメリカ経済学会、サマーズ元財務長官を活動から排除

ビジネス

豪インフレ、予想以上に長期化なら金融政策に影響も=

ワールド

「戦争の恐怖」から方向転換を、初外遊のローマ教皇が

ワールド

米ブラジル首脳が電話会談、貿易や犯罪組織対策など協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中