最新記事

中国

トランプ「香港人権法」署名に中国報復警告──日本は?

2019年11月29日(金)12時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

トランプ大統領 Yuri Gripas-REUTERS

トランプ大統領が27日「香港人権・民主法案」に署名し法案は成立した。中国の怒りは炸裂せんばかりで、報復措置を警告し、激しく威嚇している。このような中、習近平を国賓として招聘する日本は何をしているのか?

トランプ大統領、遂に署名

トランプ大統領は11月27日、「香港人権・民主主義法」(以下略称:香港法、場合によっては同法案)に署名し、香港法は同日を以て成立した。香港法は香港における逃亡犯条例改正案を巡る激しいデモが始まったその瞬間の今年6月13日に、共和党のマルコ・ルビオ議員らによって提案されたもので、10月15日に米議会下院を通過し、11月20日には上院でも全会一致で議決されていた。

香港法は基本的に、1992年にアメリカで制定された「香港政策法」に定められた原則が守られているか否かを再確認するものだが、具体的には主として以下のような内容が含まれる。

●香港に高度な自治を認める「一国二制度」が機能しているか否か、アメリカ政府は毎年検証をすること。

●香港で人権侵害などを犯した人物をアメリカ政府が議会に報告し、アメリカへの入国禁止やアメリカにおける資産の凍結などの制裁を科す。

●香港政府が再び逃亡犯条例改正案を提案した場合は、香港在住のアメリカ人を保護する戦略をアメリカ政府が策定する。

1992年の「香港政策法」では、アメリカは香港に対して関税・ビザ発給などにおける優遇措置を提供することが決められていたので、今般の香港法により、「一国二制度」により保障されているはずの「香港の高度の自治」が守られていないとすれば、それらの優遇策を見直すということにつながる。

トランプ大統領がなぜすぐに同法案に署名しなかったかというと、ちょうど今、米中貿易交渉を行っている最中で、その交渉をアメリカに有利に持っていくためのカードとして使いたかったからだろう。「譲歩しなければ署名するぞ」と中国側を脅して、次期大統領選に有利な成果を手にしたかったからにちがいない。

しかし共和党議員でさえ、全会一致で同法案採決に賛同している。

もしここでトランプ大統領がサインしなかったら、共和党議員からの支持が得られなくなる危険性がある。トランプ大統領としては、ウクライナ問題で弾劾を受けるか否かの瀬戸際に追い込まれており、もし同法案署名を拒否し続けたら共和党議員から造反者が出ないとも限らず、そんなことになったら本当に弾劾を受けることになるかもしれないと計算したのだろう。

おまけに大統領が署名を拒否し続ければ、もう一度議会にかけて3分の2以上の賛成が得られれば、同法案は成立する。そこでトランプ大統領は観念したものと推測される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、2カ

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定「完全な経済協力」、対ロ交渉

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中