最新記事

米移民

アメリカ人の大多数は不法移民や難民の受け入れに賛成

Most Americans Want Undocumented Immigrants To Be Able To Stay Legally

2019年11月13日(水)17時45分
シャンタル・ダシルバ

米ワシントンの最高裁前でトランプの反移民政策に抗議する人々 Jonathan Ernst-REUTERS

<幼少期にアメリカに来た移民に居住と労働を許してきた制度DACAの廃止を求めるトランプ政権と違い、アメリカ人は寛容だった?>

アメリカ人の大多数は、不法移民の大半が合法的に米国内に留まれるようにすることが、国にとって重要だと考えている。最新の調査で明らかになった。

調査は、ピュー・リサーチセンターが11月12日に発表したもの。折しも連邦最高裁判所では、幼少期にアメリカに入国した移民に対する強制送還の延期措置(DACA)をトランプ政権が廃止できるか否かが争われている。

DACAのおかげで、子供の時に親などと一緒にアメリカに入国した80万人近い不法移民が、アメリカでの居住と労働を認められてきた。

しかしトランプ政権はDACAを廃止しようとしている。3件の連邦地裁の判断により一時的に差し止められていたが、11月12日に最高裁での審理が始まった。

<参考記事>2歳からアメリカで育ったのに強制送還?トランプが打ち砕く「ドリーマー」の夢
<参考記事>不法移民の子どもは薬漬けで大人しくさせられていた?

ピュー・リサーチセンターの調査結果によれば、アメリカ人の3分の2(67%)は、「アメリカにいる移民の大半が合法的に米国内に留まれるようにする」仕組みを作ることが、国にとって「きわめて重要」または「ある程度重要」と回答した。

従来、不法移民に厳しい見方をしてきた共和党支持、もしくは共和党寄りの回答者の半数近く(48%)も、合法化に賛成した。民主党支持者や民主党寄りの無党派層では、その比率は82%だ。

戦争や暴力から逃れてきた難民の受け入れについても、アメリカ人の多くが支持を表明した。

9月3日から15日にかけて調査した9895名の回答者のうち、難民の受け入れがアメリカにとって重要だと考えた人は73%にのぼった。

共和党支持者の間でも難民受け入れに対する賛成が増えた。ピューによれば、難民の受け入れを重要な取り組みだと答えた共和党支持者は、2016年には40%にとどまっていた。しかし2019年には、共和党支持者の過半数(58%)が、これを支持すると回答した。

「私たちの家はここ!」最高裁の前で本国送還に抗議する不法移民



ロサンゼルスの抗議デモ


強制送還の強化には賛成

それでいながら、メキシコ国境の警備強化については支持する人が多く、回答者の68%が警備強化に賛意を示した。

共和党支持者の10人中9人(91%)は、国境の警備強化に賛成すると回答した。民主党支持者の間では、賛成は約半数(49%)だった。

共和党支持者と民主党支持者のこの明らかな隔たりは、「アメリカ滞在が認められない不法移民の強制送還の強化」という項目でも顕著に見てとれる。

共和党支持者の10人中8人(83%)は、強制送還の強化に賛成すると回答した。うち51%は、その取り組みを「きわめて重要」とした。

それに対して民主党支持者では、強制送還の強化に対する支持率は大幅に低かった。強制送還の強化に賛成する人は10人中3人(31%)、「きわめて重要」な目標とした人はわずか10%だった。

DACAの継続が認められるか否かの判断は現在、最高裁の手に委ねられている。

DACAが廃止されれば、このプログラムの恩恵を受けていた何万もの人たちや、今後DACAによる保護を申請したかもしれない多くの人が、アメリカからの強制送還に直面する可能性がある。

(翻訳:ガリレオ)

20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ビジネス

再送-〔ロイターネクスト〕米第1四半期GDPは上方

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円以外で下落 第1四半期は低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中