最新記事

中東

イラクで何が起きているのか 反政府デモ、SNSで宗派超え拡大

2019年10月10日(木)10時51分

イラクで続く反政府デモはここ数日間の参加者と治安部隊の衝突によって新たに数十人が死亡し、政府当局にとって予想外の深刻な事態となっている。写真は燃えるタイヤの間を走るデモ参加者。10月3日、バグダッドで撮影(2019年 ロイター/Wissm al-Okili)

イラクで続く反政府デモは、ここ数日間の参加者と治安部隊の衝突によって新たに数十人が死亡し、政府当局にとって予想外の深刻な事態となっている。

特定の政治利害や宗教対立とは異なるといわれるその背景や実態、今後予想される展開などをまとめた。

<なぜ人々が抗議しているのか> これほど大規模な抗議活動が前回起きたのは1年以上前。

過激派組織「イスラム国(IS)」の崩壊から2年が経過し、イラクが豊富な石油資源を抱えているにもかかわらず、なお大半の地域で暮らしの悪化が続いていることに、国民がうんざりしているからだ。

ここ数年で治安は改善したとはいえ、破損したインフラは再建されず、雇用の機会は乏しい。若者は、自分たちを代表していない腐敗した指導者たちがこうした状況の元凶だと非難している。

生活環境悪化の理由は

近隣諸国との何十年にもわたる戦争、国連の制裁、米国による2度の侵攻、宗派対立による内戦、2017年のIS崩壊といった歴史を歩んできたイラクにとって、現在は1970年代以降で初めて長期にわたって平和を享受し、自由に貿易ができる状況にある。

しかし各種インフラは老朽化、劣化が進み、戦争で被害を受けた都市はまだ復興しておらず、まだ街頭で武器を行使する武装グループが存在する。

汚職の風習はサダム・フセイン時代以来根強く、同時代が終わった後に登場してきたさまざまなイスラム教政党によって一層強固になった。

今回のデモのきっかけと組織者は

このデモは、誰か特定の政治グループが組織したようには見えない。抗議を呼び掛けるソーシャルメディアの投稿がどんどん増加し、実際の参加者は治安部隊が驚くほどの多さになった。

不十分な行政サービスや働き口がないことが、国民が怒っている主な理由だ。政府の一連の措置、特に人気のあった有力軍人を明確な説明もなく降格させたことにも抗議の声が上がっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中