最新記事

ウクライナ疑惑

弾劾調査:新証言でトランプ大統領「最悪の日」

Taylor Testimony Marks Trump's Worst Day in Office

2019年10月24日(木)16時25分
ジェイソン・レモン

トランプ弾劾の証拠になる証言をして一躍、注目の人になったウクライナ駐在のテイラー米代理大使 Carlos Jasso-REUTERS

<遂にトランプ政権の終わりの始まりか? 政敵の汚点捜査に同意しなければ国防に協力しない、と小国を脅した克明な証言が飛び出した>

ウクライナ駐在のビル・テイラー米代理大使が証言を行った10月22日午前の米下院の聴聞会。議場から出てきた民主党のアンディ・レビン下院議員は、待ち構えていた記者団にテイラー証言は衝撃的な内容だったと明かした。

「私はまだ議員になって10カ月ほどだが、今日は──と言っても、まだ正午にもなっていないね?──議員生活で最も動揺した日だった」と、レビンは記者団に語った。「いやあ、参ったよ」

ロナルド・レーガン元大統領のスピーチライターだったジョン・ポドレツはMSNBCに出演し、これはトランプが大統領になって「最悪の日」で、この証言でトランプ弾劾は100%可能になったと語った。

<参考記事>トランプ弾劾調査の引き金になった「ウクライナ疑惑」のすべて
<参考記事>トランプ、ウクライナの次は中国にバイデンの調査を要求 民主主義に最悪の反則と元米NATO大使

テイラーは、ドナルド・トランプ米大統領が批判を押し切って解任したマリー・ヨバノビッチの後任として今年6月に代理大使に就任。この日は大統領弾劾訴追のための調査を行う下院委員会の召喚に応じて、非公開の聴聞会に出席した。

そんな圧力は「狂っている」

たとえばEU駐在のゴードン・ソンドランド米大使に宛てたテキストメッセージで、テイラーは「安全保障上の援助は、(ライバル候補の)捜査を条件とする、と言っていいんですね」と、ストレートに質問していた。ここで言う捜査とは、2020年大統領選で民主党の最有力候補になっているジョー・バイデン前副大統領とその息子ハンターが絡むウクライナで行ったかもしれない不正ビジネス疑惑に関する捜査のことだ。ソンドランドは、やりとりの記録が残るのを避けるためか、「後で電話する」とだけ返事した。

またテイラーはソンドランドに、「米国内の選挙支援を見返り条件に軍事援助の提供を控えるなど、『狂っている』とメッセージで伝えた」ともBBCは報じている。

民主党のアミ・ベラ下院議員はCNNの取材に応じ、テイラー証言で「不明点がいくつも明らかになった」と述べた。ベラによれば、テイラーはソンドランド駐EU大使よりも事実関係を「はっきり覚えている」ようで、「かなり率直に自分の体験を話してくれた」という。

弾劾調査が始まったのは9月末。きっかけは内部告発だ。トランプは、2016年の米大統領選に介入したのはロシアではなく、民主党の依頼でウクライナが介入したという陰謀説を唱え、さらには2020年の米大統領選の民主党の有力候補の1人であるバイデンは、息子がウクライナで行った不正ビジネスを隠蔽しようとしたと根拠なく主張。これらの疑惑に関し、ウクライナ政府に捜査を行うよう働きかけたとして、政府内部の人間がトランプの「裏取引」を告発したのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中