最新記事

アメリカ政治

タカ派ボルトンの後任オブライエンは、地味で控えめな「交渉人」

WEAK BOLTON REPLACEMENT CHOSEN

2019年9月24日(火)19時00分
イライアス・グロル、ロビー・グレイマー、ララ・セリグマン

スウェーデンで暴行事件を起こしたアメリカ人ラッパーの裁判に立ち会うオブライエン(8月) MICHAEL CAMPANELLA/GETTY IMAGES

<4人目の国家安全保障担当補佐官人事で笑うのは? トランプ政権内部の果てしない影響力争い>

9月18日、トランプ米大統領は電撃解任したボルトン国家安全保障担当大統領補佐官の後任に、国務省のロバート・オブライエン人質問題担当特使を指名した。背景には、政権の外交政策に最も影響力を持つ人物として、ポンペオ国務長官の地位を確立する思惑があるようだ。

政権発足から2年半、ポンペオは最初はCIA長官として、さらに国務長官として外交政策に終始影響を及ぼしてきた。ほとんどの政策問題で強硬派として知られ、大統領の見解に同調するのが得意だ。トランプの気性を理解し、彼の見解を代弁するすべを心得ている。

オブライエンは混迷のさなかにホワイトハウス入りする。14日にサウジアラビアの石油施設が攻撃され、国際石油市場は混乱し、イランとの軍事衝突の懸念が再燃。北朝鮮との核交渉は行き詰まり、中国との貿易戦争も終結する気配はない。

トランプの4人目の国家安全保障担当補佐官となるオブライエンの経歴は、1人目のフリン(元陸軍中将)、2人目のマクマスター(陸軍中将)、3人目のボルトン(元国連大使)に比べてはるかに地味だ。2018年5月からトランプの人質問題担当特使となり、今年の夏にはスウェーデンで暴行容疑で起訴されたアメリカ人ラッパーの解放交渉で注目された。

「トランプの国家安全保障補佐官たちに経験と自己主張はかえって邪魔だった」と、オバマ前政権で安全保障担当補佐官のアドバイザーを務めた新米国安全保障センターのローレン・デジョング・シュルマン上級研究員は言う。「トランプは安全保障プロセスはあまり気にせず、少数の分野に強固な見解を持ち、個人の意見を重視した政策決定をする」

「ごますり」ツイートも

弁護士出身のオブライエンは2005年にブッシュ政権の国連総会の米代理代表に就任。共和・民主両政権下で国務省の「アフガニスタンの司法改革のためのパートナーシップ」共同議長も務めた。2012年の米大統領選では共和党のミット・ロムニー陣営の外交政策顧問を務めている。

派手でないことがトランプ政権では有利に働くかもしれない。トランプは自分より目立ちかねない顧問たちにいら立ちをあらわにしてきた。「オブライエンは大統領選に出馬するタイプではない」と、ヘリテージ財団外交研究所のジェームズ・カラファノ副所長は指摘する。ポンペオとライバルのエスパー国防長官との仲介役に適任かもしれない。カラファノによれば、オブライエンには「2人のような権力基盤がない」からだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ

ワールド

全米で反トランプ氏デモ、「王はいらない」 数百万人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心呼ばない訳
  • 4
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中